特集:外国人材と働く外国人材の活用で途上国の電化に貢献(北九州)
2019年11月28日
福岡県北九州市に本社を構えるFUKUSHOは、2013年8月設立、従業員数22人で、太陽光発電事業の計画から、土地の開発・造成、太陽光設備の設置工事、発電所の運営、メンテナンスまで、すべて自社でまかなう技術力とノウハウを有している。同社はジェトロの新輸出大国コンソーシアムに登録し、専門家による支援を得ながら、高度外国人材(ペルー人)を活用して、海外展開の準備を進めている。外国人材の受け入れについて、福岡竜太代表取締役、田村康一プロジェクトリーダーに話を聞いた(2019年10月4日)。
- 質問:
- 外国人材の採用目的、契機は。
- 答え:
- 海外では、途上国を中心に、電気が行き届いていないところが多く、そのような土地で、国内で蓄積した技術で貢献したい、途上国の人たちが喜ぶ顔が見たいという気持ちが以前からあった。そのような中、セネガル人を一時的に受け入れる機会があり、彼らが本国とのパイプを持っていたのがきっかけで、2017年7月、在日セネガル大使館から、セネガル農村部における電化計画および発電事業を担う人材の育成について相談を受けた。同年8月、当時のシェール・ニャング駐日セネガル大使が当社事務所と管理する発電所を視察、10月には、当社役員が調査のためセネガルへ渡航、セネガル再生可能エネルギー庁の紹介で、ダカール近郊の村の電力事情および需要の調査を行った。2017年12月には、来日したセネガルのマッキー・サル大統領との面会の機会にも恵まれた。この一連の流れを受けて、本格的に海外展開を形にする人材を探すこととなった。
- 質問:
- 現在在籍している人材の採用方法は。
- 答え:
- ハローワークを通じて採用に至った。リカルド・ディアズ電気技師は、母国ペルーでは電気関係の職に就いており、その後来日、日本の大学院で環境工学を学び、電気主任技術者の資格も有していた。母国語のスペイン語だけでなく、英語、フランス語も堪能で、日本語も、細かいニュアンスの疎通が難しいところもあったが、基本的なコミュニケーションは問題なかった。採用の過程では書類選考と面接を行った。
- 質問:
- 社内の体制整備は。
- 答え:
- 外国人材の受け入れにあたって、特段、改めて体制の整備は行っていない。他の社員もこれまで外国人受け入れを経験していたので、さほど抵抗はなかった。
- 質問:
- 外国人社員の活用策、業務内容は。
- 答え:
- 彼の得意分野である太陽光の発電効率の試算や発電システムの構築などを担当させている。十分に能力を発揮してもらっている。測量や土木積算など、専門外の業務であっても、進んで手を挙げ、業務に取り組んでもらっている。他の社員が手が回らない場合には、積極的にサポートをしている。自身の業務に自信を持って、業務を前に進めようという気概がある。
- 質問:
- 外国人材活用の利点、課題は。
- 答え:
- 利点として、日本人にない資質を持っている。固定観念がなく、違った角度で物事を捉えることができる。課題としては、日本人がチームで業務を遂行するのが得意とするのに対し、個人の意識が強い傾向がある。業務を前に進めようとするあまり、情報共有が十分でないところがある。日本での仕事のやり方や背景などから、何度でも説明するよう心掛けている。
- 質問:
- 今後の外国人採用の方針は。
- 答え:
- 当社にふさわしい人材がいれば歓迎したい。外国人は、日本人にない資質を持っている。特に、われわれがこれまで接した途上国の人材は考え方がしっかりしている。愛国心が強く、将来は母国のために何かしたいという気持ちが強い。彼らから逆に刺激を受けることが多い。現在もJICA(国際協力機構)の「ABEイニシアティブ」(アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ)のインターンシッププログラムを活用し、引き続きセネガル人留学生1人を3カ月間の予定で受け入れている。
(取材後記)
FUKUSHOは現在、アフリカでの事業展開と並行して、ジェトロの新輸出大国コンソーシアム専門家によるアドバイスを得ながら、東南アジアにおける海外拠点の設立に向けて、文献調査や現地実地調査を進めている。ターゲットは国内電化率が低く、一方で電気の買い取り価格が比較的高く設定されているミャンマーだ。ここでも、ディアズ氏が活躍し、現地に適した発電システムの構築、現地関係者との折衝などに取り組んでいる。
- 執筆者紹介
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ジェトロ北九州 所長
新井 剛史(あらい たけし) - 1995年、ジェトロ入構。ジェトロ・ハノイ事務所、ジェトロ三重などを経て、2017年7月から現職。