米国のウイグル強制労働防止法への対応は
企業のサプライチェーンに影響も

2022年8月5日

米国で2022年6月21日、2021年末に成立した「ウイグル強制労働防止法(UFLPA)」に基づく輸入禁止措置が施行された。UFLPAにより、米国では、中国の新疆ウイグル自治区が関与する製品の輸入が原則禁止される。それら製品は、強制労働により生産されたとみなされるためだ。産業界が施行前に求めていた執行猶予措置は講じられず、現地メディアは既に、UFLPAに基づく貨物の差し止め事例を報じている。UFLPAは、米中の実質的な「デカップリング」を進めるとの指摘もあり、両国をまたいだ企業活動への影響は大きい。本稿では、UFLPAに伴う輸入手続きを概説し、法律への対応上、輸入者が留意すべき点を明らかにする。

超党派で可決されたUFLPA

米国政府は、トランプ前政権以降、新疆ウイグル自治区での人権侵害を問題視し、関連企業・個人への制裁や輸出管理などの具体的な措置を講じてきた(注1)。その流れは、外交政策で人権を重視するバイデン政権で強まるばかりだ(表1参照)。輸入規制でも、執行強化の傾向は著しい。米国は1930年関税法第307条の下、強制労働により生産された物品(以下「強制労働製品」)の輸入を禁じている。米国税関・国境警備局(CBP)が同法に基づき発令する違反商品保留命令(WRO、注2)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます によって差し止められた貨物の数は、2021会計年度(2020年10月~2021年9月)に前年度比4.7倍の約1,500に急増した(2022年4月27日付ビジネス短信参照)。2022年度は2022年1月末時点で1,120と、既に前年度に迫る勢いだ。これには、新疆ウイグル自治区を対象としたWROに基づく輸入差し止めの増加も寄与しているとみられる。

表1:新疆ウイグル自治区に関連した米国政府・議会の主な措置など(バイデン政権発足後)
日付 措置などの内容
2021年
3月1日
米国通商代表部(USTR)、「2021年の通商政策課題と2020年の年次報告」で、中国の不公正な経済・貿易慣行に関し、新疆ウイグル自治区における人権侵害への対処を最優先課題に(2021年3月3日付ビジネス短信参照)
3月22日 財務省、新疆ウイグル自治区での人権侵害を理由に、中国政府の幹部2人を制裁対象となる特別指定国民(SDN)に指定(2021年3月23日付ビジネス短信参照)
6月24日 CBP、新疆ウイグル自治区で太陽光パネルの原料などを製造する合盛硅業(Hoshine Silicon Industry)からの輸入を一部差し止めるWROを発出(2021年6月25日付ビジネス短信参照)
6月24日 商務省、新疆ウイグル自治区での人権侵害に関与したとして、合盛硅業や新疆生産建設兵団(XPCC)など中国の5事業体を輸出管理規則(EAR)のエンティティー・リスト(EL)に追加(2021年6月25日付ビジネス短信参照)
7月12日 商務省、新疆ウイグル自治区での人権侵害に関与したとして、China Academy of Electronics and Information Technologyなど中国の14事業体をEARのELに追加(2021年7月12日付ビジネス短信参照)
7月13日 国務省など6省庁で構成される諮問機関、新疆ウイグル自治区を含むサプライチェーンに関する企業向け勧告を更新(2021年7月14日付ビジネス短信参照)
12月6日 バイデン政権、新疆ウイグル自治区における人権侵害を理由に、北京冬季オリンピック(五輪)の外交的ボイコットを発表(2021年12月7日付ビジネス短信参照)
12月10日 財務省、新疆ウイグル自治区での人権侵害に関与したとして、中国の人工知能(AI)大手の商湯科技(センスタイム)を「非・特別指定国民・中国軍事・産業複合企業リスト(NS-CMIC List)」に追加し、米国人による証券投資を禁止(2021年12月13日付ビジネス短信参照)
12月16日 財務省、新疆ウイグル自治区のウイグル族らに対する生体認証による監視・追跡を積極的に支援しているとして、ドローン大手DJIなど中国企業8社をNS-CMIC Listに追加(2021年12月17日付ビジネス短信参照)
12月27日 2022会計年度国防授権法(NDAA)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが成立。新疆ウイグル自治区における強制労働に依拠する物品の国防総省による調達を禁止
12月23日 ウイグル強制労働防止法(UFLPA)が成立(2021年12月24日付ビジネス短信参照)
2022年
6月13日
CBP、UFLPAの輸入者向けガイダンスを公表(2022年6月14日付ビジネス短信参照)
6月21日 国土安全保障省、UFLPAの執行戦略を公表(2022年6月20日付ビジネス短信参照)

出所:米国政府・連邦議会の発表資料からジェトロ作成

バイデン政権が新疆ウイグル自治区における人権侵害への対処を通商政策課題に掲げる中、連邦議会が具体的な措置として可決したのがUFLPAだ。同法は上下両院の超党派で可決された後、ジョー・バイデン大統領が2021年12月23日に署名し、成立した(注3)。UFLPAでは、新疆ウイグル自治区で全部または一部が採掘、生産または製造された物品について、強制労働に依拠しているとの「反証可能な推定」に基づき、米国への輸入を原則禁止する。後に詳述するように、CBPが「輸入例外」を認めない限り、輸入はできない。UFLPAは輸入禁止措置に加え、新疆ウイグル自治区における強制労働に対処するための外交戦略の策定(注4)のほか、2020年ウイグル人権政策法外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます による制裁対象範囲の拡大も定めている。

UFLPAに関し、米産業界は、法律の運用面で企業活動への配慮を求める一方、強制労働への対抗という趣旨には賛同している。全米小売業協会(NRF)を含む5団体は、UFLPAの議会通過後に出した共同声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます で、加盟企業は一貫してサプライチェーンにおける強制労働の特定と撲滅に取り組んでいると表明し、同法は強制労働製品の米国への輸入を防ぐ上で、企業とCBPの連携を強化すると評価した。

輸入者はガイダンスに従い適切な対応が必要

前述のとおり、UFLPAの対象物品は原則、米国への輸入が禁止される。輸入禁止対象には、新疆ウイグル自治区で強制労働により物品を生産しているなどとして、米国政府の強制労働執行タスクフォース(FLETF)が特定した事業体(注5)によって生産された製品も含まれる。それらの事業体は、FLETFが策定したUFLPAの執行戦略外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます (以下「UFLPA戦略」)の中で、「UFLPAエンティティー・リスト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます (EL)」として公開されている(2022年6月20日付2022年6月21日付ビジネス短信参照)。リストに指定された事業体は、既存のWROの対象事業体と商務省産業安全保障局(BIS)のEL(注6)掲載事業体で構成されており、既に米国政府が人権侵害への関与を特定していた事業者といえる。

UFLPAに基づき、輸入貨物を差し止められた場合、輸入者はいかに対応すべきか。取り得る対応は、当該物品がUFLPAの対象であるか否かによって変わる。対象でない場合、輸入者は、輸入物品とその原材料が新疆ウイグル自治区で生産されておらず、かつUFLPAのEL掲載事業体がサプライチェーンに関与していないことを示す必要がある。一方、UFLPAの対象である場合には、輸入例外の申請が可能だ(図参照)。輸入者はUFLPAに基づくデューディリジェンスやサプライチェーン追跡・管理などに関するガイダンスを順守し、税関の照会に対応する。その上で、輸入物品が強制労働に依拠していないことを証明する「明確かつ説得力のある証拠」を提出し、CBP局長が認めれば輸入が可能となる。いずれの場合でも、輸入者はUFLPA戦略にある輸入者向けガイダンスに加え、CBPの運用ガイダンス(2022年6月14日付2022年6月17日付ビジネス短信参照)に従い、CBPに各種情報を提供することが求められる(表2参照)。

図:UFLPAに基づく輸入手続きの流れ
UFLPAに基づく輸入手続きをみると、輸入物品の審査、輸入差し止め、通関からの排除、押収・没収の各段階に分けられる。まず、税関は輸入物品が米国法を順守しているか審査する。税関は輸入物品が審査のためにCBPに提示された日から5日(週末および休日を除く)以内に当該物品を解放するか、差し止めるかを決定する。5日以内に解放されない場合、差し止め扱いになる。税関は差し止め決定後5日以内に差し止め通知を輸入者に発出する。輸入者は、輸入物品が審査のためにCBPに提示された日から原則30日以内に輸入例外を申請可能。同30日以内に輸入物品が解放されない場合、通関から排除された扱いになる。輸入物品が通関から排除された場合、輸入者は排除の決定から180日以内に異議申し立て (輸入例外申請)が可能。異議申し立てが30日以内に認められない場合、却下の扱いになる。UFLPAに違反した輸入物品は押収・没収の対象になる。輸入物品が押収された場合、押収通知の受領日から原則30日以内に救済の請願申請 (輸入例外申請)が可能。CBPは輸入例外を認めた場合、その決定後30日以内に、輸入を認めた物品と考慮した証拠を記載した報告書を連邦議会に提出し、公表する。なお、輸入者は、差し止められた貨物が押収・没収される前に米国外に再輸出可能。

注1:審査~通関からの排除に関わる手続きについては合衆国法典第19編1499条PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(229KB)連邦規則集第19編151.16条外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 、通関からの排除に対する異議申し立てについては合衆国法典第19編1514条PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(249KB)連邦規則集第19編174条外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 、押収に対する請願申請については合衆国法典第19編1595a条外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます連邦規則集第19編171条外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます をそれぞれ参照。
注2:税関は輸入差し止め、通関からの排除、押収の各段階で輸入者に通知を行う。
出所:CBPガイダンスからジェトロ作成

表2:CBPから求められる可能性のある文書の種類と性質
種類 文書の例
A.デューディリジェンス・システムの情報(デューディリジェンスのシステムまたはプロセスを示す文書)
  • 強制労働のリスクを評価し、対処するためのサプライヤーおよびその他のステークホルダーとの関わり
  • サプライチェーンのマッピング、および原材料から輸入物品の製造までのサプライチェーンに沿った強制労働リスクの評価
  • 強制労働の使用を禁じ、中国政府の労働スキームを利用するリスクに対処する書面によるサプライヤーの行動規範など
B.サプライチェーン追跡情報(原材料から輸入物品までのサプライチェーンを追跡する文書) サプライチェーン全体に関する証拠
  • 輸入物品およびその構成品を含むサプライチェーンの詳細な説明
  • 荷送人および輸出者を含むサプライチェーンにおける事業体の役割
  • 生産工程の各段階に関連するサプライヤーのリスト
  • 生産工程に関与する各企業または事業体からの宣誓供述書など
商品またはその構成部品に関する証拠書類
  • 発注書
  • 全てのサプライヤーおよびサブサプライヤーのインボイス
  • 原産地証明書など
採掘業者、生産者、または製造業者に関する証拠
  • 商品またはその構成品の原材料に関する前述の証拠
  • 採掘、生産または製造の記録など
C.サプライチェーン管理措置に関する情報
  • 強制労働のリスクを防止または軽減し、輸入物品の採掘、生産または製造において確認された強制労働の使用を是正するための内部統制
  • 輸入者は、提供された文書が、監査済み財務諸表を含む業務システムまたは会計システムの一部であることを証明できなくてはならない
D.商品の全部または一部が新疆ウイグル自治区で採掘、生産、または製造されていないことを示す証拠 商品のサプライチェーンを追跡する文書(書類の種類については、サプライチェーン追跡情報に関するBを参照)
E.中国原産の商品の全部または一部が強制労働によって採掘、生産、または製造されていない証拠
  • 商品の生産に関与する全ての事業体を特定するサプライチェーンマップ
  • 中国での商品の生産に関わる各事業体の労働者に関する情報(労働者1人当たりの賃金支払いや生産高など)
  • 労働者の募集、および中国における全ての労働者が募集され、自発的に働いていることを確実にするための内部統制に関する情報
  • 強制労働の指標を特定するための信頼できる監査と、該当する場合は強制労働の是正

輸入者は、輸入物品がUFLPAの対象外であることを示す場合にはBとCの書類を、輸入例外を申請する場合にはA、B、C、Eの書類を用意することが必要。

注:詳細は、UFLPA戦略およびCBPガイダンスを参照。CBPガイダンスの付属書では、強制労働のリスクが高いとされる綿、ポリシリコン、トマトを輸入する際に求められる可能性のある書類の内容を別途例示している。
出所:CBPガイダンスからジェトロ作成

米国はこれまでも、個別のWROにより、新疆ウイグル自治区からの強制労働製品の輸入を防止してきた。ただ、新たなWROを発令するに当たって、CBPは調査などを経て強制労働の関与を示す合理的な情報を特定する必要がある。一方、UFLPAは「反証可能な推定」の導入により、強制労働の有無に関する立証責任をCBPから輸入者に移転した。このことから、通商分野に詳しい米法律事務所は、UFLPAが関税法307条に基づくCBPの執行能力を強化した、と指摘する。新疆ウイグル自治区が関わるWROの対象物品には6月21日以降、UFLPAが優先的に適用されている。貨物を差し止められた場合の輸入手続きを比較すると、WROでは反証期間が3カ月与えられているのに対し、UFLPAでは30日間と短く、輸入者にとって厳しい規則が採用されている。

サプライチェーンへの影響も

UFLPAでは、原産国や輸出元国が中国ではない、第三国で生産された製品も差し止め対象になる。同法は、新疆ウイグル自治区で完成された製品だけでなく、同自治区産の原材料やUFLPAのEL事業体から調達した材料を組み込んだ製品にも適用されるからだ。加えて、UFLPAにはデミニミス規定(注7)がない。そのため、輸入物品にわずかでも輸入禁止対象の原材料が含まれていれば、法律が適用される。このように、UFLPAの適用範囲が広いことから、CBPは2023会計年度の予算要求資料PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(10.43MB) で、同法の施行により、関税法307条の執行対象となる輸入貨物・取引が年間1,150万件増加するとの予測を示している。これは、施行前の100万未満から大幅な増加となる。

輸入差し止めの増加が見込まれる中、UFLPAがサプライチェーンに与える影響を懸念する声もある。米国の制裁法に詳しい米法律事務所は、同法の厳格運用による貨物差し止めの急増が、国際サプライチェーン上の新たなボトルネックとなるリスクを指摘する。CBPも通関手続きの遅延などを予期しており、複数の情報源に基づき、差し止めるべき貨物を効率的かつ効果的に絞るとしている。また、法執行に当たっては「リスクベースのアプローチ」を取る方針を示している。具体的には、リスクが高い物品として新疆ウイグル自治区やUFLPAのEL事業体から直接輸入される物品などを挙げている。UFLPA戦略では、優先的に法執行すべき分野として、アパレル製品、綿・綿製品、ポリシリコンを含むシリカ系製品、トマトおよびその派生製品を特定しており、施行直後はこれらの製品に執行が集中する可能性が高い。前述の通商分野に詳しい米法律事務所は、シリカ系製品について、自動車や電子機器、太陽光パネルなど幅広い製品に使われるため、輸入禁止措置がサプライチェーンの下流に与える影響に注意を促す。CBPも米国内企業に対し、直接海外から輸入していない場合でも、UFLPA に伴うサプライチェーンリスクを認識するよう注意喚起している。取引先の輸入する商品が UFLPAに違反した場合、自社のビジネスにも影響する可能性があるからだ。

UFLPAの施行に伴い、企業の間ではサプライチェーンを見直す動きもある。例えば、サプライヤーを中国から他国に変更したり、中国のサプライヤーを買収してサプライチェーンの管理体制を強化したりする動きだ(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版2022年7月4日)。米国ファッション産業協会(USFIA)の調査では、大手ファッションブランドの95%がUFLPAの影響を受け、また、同法の影響として86%が中国からの綿製品の調達を「減らしている」または「減らす予定」と回答した(2022年7月28日付ビジネス短信参照)。米国太陽エネルギー産業協会(SEIA)は、新疆ウイグル自治区での人権侵害の報道を受け、UFLPAの成立前から太陽光発電に関わる企業に対し、自社のサプライチェーンを同自治区外に移すよう強く促している。

施行後も追加ガイダンスに留意

CBPはUFLPAに基づき、既に一部の輸入を差し止めたもようだ。太陽光産業専門誌「pv magazine USA」(2022年7月1日)は、米投資銀行ROTHキャピタルパートナーズの報告を引用しつつ、中国の太陽光発電製品メーカー、ジンコソーラーの製品が差し止められた、と報じた。

今後、UFLPAの執行が本格化する中、CBPが追加の輸入者向けガイダンスや規則を出す可能性もある。そのため、米国の通商コンサルタントは輸入者に対し、最新の情報に注意を払うよう促している(注8)。CBPはUFLPA戦略の中で、強制労働の疑いにより迅速に対応するため、関連規則を変更したり、輸入手続きの手順や要件についてより明確なガイダンスを提供したりすることを検討する、と記している。米産業界からは、UFLPA施行前から法執行の透明性を重視する意見が出ていた。施行後も、CBPの諮問委員会(COAC)が、ガイダンスのさらなる明確化や輸入例外申請の規則変更を求める提言を行っており、法律の運用に対する産業界の懸念は完全には払拭されていない(2022年7月14日付ビジネス短信参照)。特に、自動車のように多くのサプライヤーを抱える産業にとっては、デューディリジェンスの十分な実施が課題になる、という指摘もある[国営放送局ボイス・オブ・アメリカ(VOA)2022年6月20日]。

また、優先執行分野やUFLPAのELの拡大にも留意すべきだろう。UFLPA戦略で特定されている製品以外にも、新疆ウイグル自治区における強制労働に関与している産業や製品として、ポリ塩化ビニルやアルミニウムなどが報告されている(注9)。米国政府は2021年7月に更新した企業向け勧告外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます で、農業や建設など同自治区で強制労働が疑われる20の産業(注10)を挙げている。UFLPAのELについては、FLETFを構成する各省庁が事業体の追加などを勧告することが可能だ。

連邦議会は、新疆ウイグル自治区が絡む米国企業のビジネス活動に監視の目を光らせている。UFLPAへの超党派の支持をみても明らかなように、中国の人権問題に対する米国の姿勢は、たとえ今後、政権与党が変わったとしても緩む見込みはない。そのことを念頭に置いて、企業はUFLPAに対応していく必要がある。


注1:
人権侵害に対処する上で順守すべき米国の法令などについては、ジェトロ調査レポート「グローバル・バリューチェーン上の人権侵害に関連する米国規制と人権デューディリジェンスによる実務的対応」を参照(2022年6月20日付ビジネス短信参照)。
注2:
WROを含む米国における人権関連法・規制や、サプライチェーンに関わる規制の運用、実務上の対応などについては、2021年6月25日付地域・分析レポートも参照。
注3:
UFLPAについては、ジェトロ特集ページ「ウイグル強制労働防止法」も参照。同ページでは、UFLPAに関する最新動向を随時紹介している。
注4:
外交戦略では、国務長官が、新疆ウイグル自治区でのウイグル族などの強制労働を終わらせるための2国間・多国間の協力強化に向けた計画などを策定する。外交戦略は公表されていないが、UFLPA戦略によると、国務省は4月12日に「新疆における強制労働に対処するための外交戦略」を議会に提出している。
注5:
UFLPAはFLETFに対し、(1)新疆ウイグル自治区において、全体または部分的に強制労働を伴う商品、製品または物品を採掘、生産、または製造する事業体、(2)新疆ウイグル自治区政府と協力して、強制労働者、ウイグル族、カザフ族、キルギス族、その他の迫害された集団のメンバーを募集、輸送、移送、収容、または受け入れる事業体、(3)(1)または(2)の事業体が全部または一部を採掘、生産、または製造した製品を中国から米国に輸出した事業体、(4)新疆ウイグル自治区、または強制労働を使用する中国政府の労働プログラムの目的で新疆ウイグル自治区政府もしくは新疆生産建設兵団(XPCC)と協力する者から材料を調達する事業体および施設、を特定するよう義務付けている。
注6:
ELは米国の輸出管理規則(EAR)で定められたリストで、省庁横断の委員会が「米国の国家安全保障または外交政策上の利益に反する行為をした」と判断した団体や個人が掲載されている。
注7:
規制に抵触する原材料・部品の金額または数量が製品全体に占める割合が少数の場合の例外措置。
注8:
最新情報はDHSのUFLPA専用ページ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますCBPのUFLPA専用ページ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます で確認可能。
注9:
ポリ塩化ビニルについては英国シェフィールド・ハラム大学などの調査(2022年6月)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます を、アルミニウムについては米コンサルティング会社ホリゾンタル・アドバイザリーの報告書(2022年4月)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます を参照。
注10:
農業、携帯電話、清掃機器、建設、綿(製品)、電子機器組み立て、資源採掘、髪製品、食品加工、履物、手袋、ホスピタリティサービス、金属工学レベルのシリコン、麺製造、印刷、再生可能エネルギー(ポリシリコンなど)、甘味料、砂糖、繊維(アパレルなど)、玩具。
執筆者紹介
ジェトロ・ニューヨーク事務所〔戦略国際問題研究所(CSIS)日本部客員研究員〕
甲斐野 裕之(かいの ひろゆき)
2017年、ジェトロ入構。対日投資部対日投資課、海外調査部米州課を経て、2022年2月から現職。

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