米国勢調査の最新結果から人口動態変化を読み解く

2021年10月14日

米国の国勢調査局は2021年8月、10年ごとに実施する2020年の国勢調査(センサス)の詳細データ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公表した(2021年8月16日付ビジネス短信参照)。このデータからは、米国の人口増加率の低下や、人口分布の南方シフト、都市化の進展、人種・民族の多様化、若年層の人口減少など、米国の人口動態変化がうかがえる。

最新のセンサスの結果によると、2020年4月1日時点の米国の総人口(全米50州とコロンビア特別区の居住人口)は3億3,144万9,281人。前回センサスが行われた2010年の3億874万5,538人から、2,270万3,743人増加した。総人口は、10年前に比べ7.4%増加した。ただし、伸び率は以前に比べて鈍化している。10年間の伸び率としては、1900年以降で、1930~1940年の7.3%に次いで2番目に低い(図1参照)。

図1:米国の総人口・増加率推移
米国の総人口は、1910年9,223万人、1920年1億602万人、1930年1億2,320万人、1940年1億3,217万人、1950年1億5,133万人、1960年1億7932万人、1970年2億321万人、1980年2億2655万人、1990年2億4871万人、2000年2億8142万人、2010年3億875万人、2020年3億3145万人。米国の総人口の伸び率は、1910年21.0%、1920年15.0%、1930年16.2%、1940年7.3%、1950年14.5%、1960年18.5%、1970年13.3%、1980年11.5%、1990年9.8%、2000年13.2%、2010年9.7%、2020年7.4%。

注:4月1日時点における全米50州およびコロンビア特別区の居住人口。
出所:米国勢調査局

人口分布の南方シフト続く、都市化も進展

国内の人口分布をみると、地域別(注1)では、総人口に占める南部と西部のシェアが高まった。その裏返しで、北東部と中西部は低下した(表1参照)。とりわけ南部のシェア拡大が顕著だ。2000年の35.6%から、2020年に38.1%と2.5ポイント上昇した。西部の拡大幅は1.3ポイントだった。反対に、人口シェアの低下が最も大きいのは中西部だ。同期間に2.1ポイント縮小した。北東部のシェアも1.7ポイント低下。米国の人口分布の重心が北から南へシフトを続けているのが、確認されたことになる。

州別の人口は、2020年時点で表1記載の10州が1,000万人以上を有する。これら上位10州に、総人口の半数超が居住する。カリフォルニア、テキサス、フロリダの上位3州だけで、総人口の27.2%を占める。これにニューヨーク、ペンシルベニアを加えた上位5州のシェアは約4割(37.2%)に及ぶ。対照的に、人口下位5州のワイオミング、バーモント、アラスカ、ノースダコタ、サウスダコタの居住人口は計362万人。総人口の1.0%を占めるにすぎない。

過去10年間の人口増加数は、テキサス州の400万人が最多だ。以下、フロリダ州(274万人)、カリフォルニア州(228万人)、ジョージア州(102万人)、ワシントン州(98万人)が続く。5州の増加数を合わせると、同期間の総人口増加のほぼ半分を占める。

人口の増加率は、ユタ州が18.4%と最も高かった。人口増加率で10%以上となるのが、ユタを含む13州と首都ワシントンDCのあるコロンビア特別区。州としては、ノースダコタを除き、いずれも西部か南部に所在する。反対に人口が減少したのは、イリノイ(1.8万人減)、ミシシッピ(0.6万人減)、ウェストバージニア(5.9万人減)の3州。また、増加こそしたものの率が最も低いのが北東部のコネティカット州(0.9%増)だった。これにミシガン、オハイオ、ワイオミング、ペンシルベニアと、中西部や北東部の州が続く。

人口100万人以上の10大都市は、いずれも過去10年間に人口が増加した。州全体では人口が減少したイリノイでも、シカゴ市の人口は5万人増加している。人口上位の10大都市のうち、人口の伸びではアリゾナ州フェニックス市(11.2%増)、人口増加数ではニューヨーク州ニューヨーク市(63万人)がそれぞれ最大だった。

表1:米国の人口分布(2010年、2020年)(単位:人、%)(△はマイナス値)
区分 地域・州・市 2010年 2020年
人口 増減率 構成比 人口 増減率 構成比
全国 全米 308,745,538 9.7 100.00 331,449,281 7.4 100.00
地域 北東部 55,317,240 3.2 17.92 57,609,148 4.1 17.38
中西部 66,927,001 3.9 21.68 68,985,454 3.1 20.81
南部 114,555,744 14.3 37.10 126,266,107 10.2 38.10
西部 71,945,553 13.8 23.30 78,588,572 9.2 23.71
カリフォルニア州(CA) 37,253,956 10.0 12.07 39,538,223 6.1 11.93
テキサス州(TX) 25,145,561 20.6 8.14 29,145,505 15.9 8.79
フロリダ州(FL) 18,801,310 17.6 6.09 21,538,187 14.6 6.50
ニューヨーク州(NY) 19,378,102 2.1 6.28 20,201,249 4.2 6.09
ペンシルバニア州(PA) 12,702,379 3.4 4.11 13,002,700 2.4 3.92
イリノイ州(IL) 12,830,632 3.3 4.16 12,812,508 △ 0.1 3.87
オハイオ州(OH) 11,536,504 1.6 3.74 11,799,448 2.3 3.56
ジョージア州(GA) 9,687,653 18.3 3.14 10,711,908 10.6 3.23
ノースカロライナ州(NC) 9,535,483 18.5 3.09 10,439,388 9.5 3.15
ミシガン州(MI) 9,883,640 △ 0.6 3.20 10,077,331 2.0 3.04
ニューヨーク(NY) 8,175,133 2.1 2.65 8,804,190 7.7 2.66
ロスアンゼルス(CA) 3,792,621 2.6 1.23 3,898,747 2.8 1.18
シカゴ(IL) 2,695,598 △ 6.9 0.87 2,746,388 1.9 0.83
ヒューストン(TX) 2,099,451 7.4 0.68 2,304,580 9.8 0.70
フェニックス(AZ) 1,445,632 9.4 0.47 1,608,139 11.2 0.49
フィラデルフィア(PA) 1,526,006 0.6 0.49 1,603,797 5.1 0.48
サンアントニオ(TX) 1,327,407 16.0 0.43 1,434,625 8.1 0.43
サンディエゴ(CA) 1,307,402 6.9 0.42 1,386,932 6.1 0.42
ダラス(TX) 1,197,816 0.8 0.39 1,304,379 8.9 0.39
サンホセ(CA) 945,942 5.8 0.31 1,013,240 7.1 0.31

注:人口上位の10州・市を表示。増減率は前回センサス(10年ごとに実施)結果との比較。構成比は総人口に対する割合、太字は前回センサスからの上昇を示す。
出所:米国勢調査局

2010年から2020年にかけては、人口分布に占める南部の比重の高まりとともに、都市部への人口集中の進展がみられた。都市圏(Metro Area)の81%で人口が増えた一方、小都市圏(Micro Area)で増加したのは48%にとどまった(注2)。都市圏の中では、特にテキサス州のダラス-フォートワース-アーリントン都市圏と、ヒューストン-ウッドランズ-シュガーランド都市圏で人口増加率が2割を超えた。それぞれ、過去10年間に120万人以上増加している。このほか、ニューヨークとニュージャージー、ペンシルベニアの各州にまたがるニューヨーク-ニューアーク-ジャージー・シティー都市圏でも120万人以上の人口増がみられた。これら以外の都市圏では、ミシガン州のグランド・ラピッズ-ケントウッド都市圏、アリゾナ州のツーソン都市圏、ハワイ州のアーバン・ホノルル都市圏、オクラホマ州のタルサ都市圏、カリフォルニア州のフレズノ都市圏で、居住人口が100万人を突破した。他方、小都市圏で人口が急増したのは、人口増を記録した都市圏に近郊立地する傾向がみられる。ここからも、都市部への人口集中が進んでいることが見て取れる。

ヒスパニック・ラテン系の人口シェアが拡大、白人は縮小

最新のセンサスでは、国内で人種・民族の多様化が進展している状況も確認された(注3)。ダイバーシティー指数(以下DI、注4)を用いた分析に基づくと、全米のDIは2010年の54.9%から2020年に61.1%に上昇した。人種・民族の多様化が進んだことを示している。DIが高い州は、順に(1)ハワイ(2010年75.1%→2020年76.0%)を筆頭に、(2)カリフォルニア(67.7%→69.7%)、(3)ネバダ(62.5%→68.8%)、(4)メリーランド(60.7%→67.3%)、(5)コロンビア特別区(61.9%→67.2%)、(6)テキサス(63.8%→67.0%)、(7)ニュージャージー(59.4%→65.8%)、(8)ニューヨーク(60.2%→65.8%)、(9)ジョージア(58.8%→64.1%)、(10)フロリダ(59.1%→64.1%)だ。特にメリーランド、ニュージャージー、ネバダのDIは、10年前に比べ6ポイント以上上昇した。

米国の総人口に占める人種・民族グループの構成は、2020年時点で白人の割合が57.8%と引き続き最大だ。しかし構成比は、2010年の63.7%から5.9ポイント低下した。3番目に多い「黒人またはアフリカ系米国人」も、10年前の12.2%から12.1%とわずかに減った。対照的に、シェアが拡大したのが、白人に次いで多い「ヒスパニック系またはラテン系」で、同期間に16.3%から18.7%へ上昇した(図2参照)。

人種・民族グループの人口構成を州別に見ると、カリフォルニア、ハワイ、ニューメキシコ、コロンビア特別区以外の全ての州で、白人の割合が最大となっている。ハワイ州に次いで2番目にDIの高いカリフォルニア州では、「ヒスパニック系またはラテン系」の人口シェアが2010年の37.6%から2020年に39.4%に拡大。最大の人種・民族グループとなった。「アジア系」のシェアも12.8%から15.1%に上昇している。一方、2010年時点で40.1%と最大だった白人のシェアは、34.7%に低下した。人種・民族構成の上でも、過去10年間の変化は大きかったと言える。

テキサス州では、人種・民族グループの順位に変動はなかった。しかし、最大の白人(2020年39.7%)と2位の「ヒスパニック系またはラテン系」(同39.3%)のシェアの差が、2010年の7.7ポイントから2020年に0.4ポイントまで縮小した。逆に、コロンビア特別区では、白人のシェア拡大がみられた。最大の「黒人またはアフリカ系米国人」との差が、2010年の15.2ポイントから2020年に2.9ポイントに縮まった。その他の州では、ウェストバージニアで「多人種」(2つ以上の人種による混血)が、ウィスコンシンでヒスパニック系またはラテン系が、それぞれ「黒人またはアフリカ系米国人」のシェアを上回った。それらは、白人に次ぐ第2の人種・民族グループに浮上している。

図2:多様性指数上位州おける人種・民族グループの人口構成
全米の2010年は白人63.7%、ヒスパニック系またはラテン系16.3%、黒人またはアフリカ系米国人12.2%。全米の2020年は白人57.8%、ヒスパニック系またはラテン系18.7%、黒人またはアフリカ系米国人12.1%。カリフォルニアの2010年は白人40.1%、ヒスパニック系またはラテン系37.6%、アジア系12.8%。カリフォルニアの2020年はヒスパニック系またはラテン系39.4%、白人34.7%、アジア系15.1%。テキサスの2010年は白人45.3%、ヒスパニック系またはラテン系37.6%、黒人またはアフリカ系米国人11.5%。テキサスの2020年は白人39.7%、ヒスパニック系またはラテン系39.3%、黒人またはアフリカ系米国人11.8%。コロンビア特別区の2010年は黒人またはアフリカ系米国人50.0%。白人34.8%、ヒスパニック系またはラテン系9.1%。コロンビア特別区の2020年は黒人またはアフリカ系米国人40.9%。白人38.0%、ヒスパニック系またはラテン系11.3%。

注:各州で人口構成比の大きい上位3つの人種・民族グループを表示。
出所:米国勢調査局

若年人口が減少に転じる、成人は1割増加

年齢別には、過去10年間に18歳以上の成人人口が増加した。一方、18歳未満の若年人口は減少に転じた。2020年時点で総人口の77.9%に相当する2億5,834万人が成人で、2010年の2億3,456万人から10.1%(2,378万人)増加した(表2参照)。ただ、伸び率はそれ以前の12.2%に比べ鈍化している。一方、若年人口は2010年の7,418万人から2020年に7,311万人と1.4%(108万人)減少した。その要因の1つとして、2008年以降の出生率(general fertility rate)の全般的な低下が指摘できる。出生率は、2007年の15~44歳の女性,1000人当たり69.3人から2018年に同59.1人へと低下した。

地域別にも、全ての地域で成人の割合が上昇。反対に、18歳未満は低下している。各地域での成人のシェア拡大は2000~2010年にかけてもみられ、過去10年間にこの傾向が継続した。4地域の中では、北東部で成人の割合が79.7%と最も高い。

表2:各地域における年齢別人口構成比・増加率

人口 (単位:人)
地域 2010年 2020年
18歳未満 18歳以上 18歳未満 18歳以上
全米 74,181,467 234,564,071 73,106,000 258,343,281
北東部 12,333,192 42,984,048 11,710,364 45,898,784
中西部 16,128,108 50,798,893 15,473,403 53,512,051
南部 27,788,757 86,766,987 28,361,793 97,904,314
西部 17,931,410 54,014,143 17,560,440 61,028,132
構成比(単位:%)
地域 2010年 2020年
18歳未満 18歳以上 18歳未満 18歳以上
全米 24.0 76.0 22.1 77.9
北東部 22.3 77.7 20.3 79.7
中西部 24.1 75.9 22.4 77.6
南部 24.3 75.7 22.5 77.5
西部 24.9 75.1 22.3 77.7
増減率(単位:%)(△はマイナス値)
地域 2010年 2020年
18歳未満 18歳以上 18歳未満 18歳以上
全米 2.6 12.2 △ 1.4 10.1
北東部 △ 5.5 6.0 △ 5.1 6.8
中西部 △ 3.1 6.4 △ 4.1 5.3
南部 8.7 16.2 2.1 12.8
西部 5.3 17.0 △ 2.1 13.0

注:増減率は前回センサス(10年ごとに実施)結果との比較。構成比の太字は前回センサスからの上昇を示す。
出所:米国勢調査局

18歳未満の人口減少は、ほぼ全米的にみられる。特に北東部では、その傾向が強い。過去10年間に5.1%減と、2000年代に続き5%を上回る減少ペースとなった。他地域でも、中西部で若年人口減少が加速(3.1%減→4.1%減)したほか、西部では2000年代の5.3%の増加から2.1%の減少に転じた。各地域で若年人口が減る中、南部だけは増勢を維持した。もっとも、伸び率は8.7%から2.1%に鈍化した。だとしても、2010年以降の若年層の増加数は57万人に及ぶ。

一方、成人人口の増加は全ての地域に共通する。特に南部の増加が顕著。過去10年間に1,114万人増加した。南部以外では西部の増加幅が大きく、701万人増えた。北東部では、成人人口の増加ペースが以前よりも加速。若年人口の減少率の高さとも相まって、人口の高齢化が他地域に先行して進んでいる状況が確認された。

今後の人口動態にも注目

次回のセンサスは2030年4月に予定されている。2020年のセンサスで明らかになったのは、(1)人口増加率の低下、(2)人口分布の南方シフト、(3)都市化の進行、(4)人種・民族構成の多様化と白人の人口シェア縮小、(5)若年層の人口減少だった。この傾向はさらに進むのだろうか。

人口動態の変化は米国の政治経済の潮流を根底で規定する。その意味でも、今後の変化の行方が注目される。


注1:
本稿では、地域は2020年センサスの定義に基づき以下の通り扱った。
  • 北東部:コネティカット、メーン、マサチューセッツ、ニューハンプシャー、ニュージャージー、ニューヨーク、ペンシルベニア、ロードアイランド、バーモント
  • 中西部:イリノイ、インディアナ、アイオワ、カンザス、ミシガン、ミネソタ、ミズーリ、ネブラスカ、ノースダコタ、オハイオ、サウスダコタ、ウィスコンシン
  • 南部:アラバマ、アーカンソー、デラウェア、フロリダ、ジョージア、ケンタッキー、ルイジアナ、メリーランド、ミシシッピ、ノースカロライナ、オクラホマ、サウスカロライナ、テネシー、テキサス、バージニア、ウェストバージニア
    (補足)コロンビア特別区(首都ワシントンDC)は、この地域的な定義上、南部に分類される。
  • 西部:アラスカ、アリゾナ、カリフォルニア、コロラド、ハワイ、アイダホ、モンタナ、ネバダ、ニューメキシコ、オレゴン、ユタ、ワシントン、ワイオミング
注2:
metro areaは5万人以上の人口を有する1つ以上の都市とひもづけられた統計上の地域区分、micro areaは1万人以上5万人未満の人口を有する1つ以上の都市とひもづけられた統計上の地域区分。
注3:
国勢調査局は、2010年時点と比較した上での人種分布の全体的な変化について報告した。この変化に関し、過去10年間の人口動態変化に加え、人種・民族に関するデータ収集のための質問設計を改善したこととデータ処理方法を変更したことを指摘した。あわせて、この改善・変更により、人々がどのように自認するか、過去の測定時よりも徹底して正確に描写することが可能になったと説明している。
注4:
ダイバーシティー指数(DI)は、圏域から無作為に2人を選んだとして、両者が異なる人種・民族の確率と定義される。
執筆者紹介
ジェトロ・ニューヨーク事務所 次長
米山 洋(よねやま ひろし)
1997年、ジェトロ入構。ジェトロ北海道、ジェトロ・マニラ事務所、海外調査部国際経済課長などを経て、2020年9月から現職。共著『ジェトロ世界貿易投資報告総論編 各年版』『南進する中国とASEANへの影響』『ASEAN経済共同体』『FTAガイドブック2014』『分業するアジア』(ジェトロ)など。

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