米税関諮問委、ウイグル強制労働防止法の運用改善を提言
(米国、中国)
ニューヨーク発
2022年07月14日
米国税関・国境警備局(CBP)の運営などに関して助言を行う商業税関運営諮問委員会(COAC、注1)は6月29日、定例会議を開催し、6月21日に施行されたウイグル強制労働防止法(UFLPA)の禁輸措置(2022年6月21日記事参照)の運用改善を提言した(注2)。UFLPAにより、中国の新疆ウイグル自治区が関与する製品の米国への輸入は原則禁じられている。
COACの強制労働ワーキンググループ(FLWG)は提言の中で、CBPによるUFLPAの運用の透明性や貿易従事者への関与の重要性を強調した。一方、CBPが6月に公表した輸入者向け運用ガイダンス(2022年6月14日記事、2022年6月17日記事参照)について、一般的な情報は提供しているものの、これまで提出された多くの実務的な提言が反映されていない、と指摘。その上で、ガイダンスに関して13の提言を行っている。
主な点を挙げると、FLWGは、UFLPAに基づき差し止められた輸入物品が、強制労働に依拠していないことを証明するための「明確かつ説得力のある証拠」について、明確に定義付けするよう求めた。可能な場合は、証拠の詳細な例を提供すべきとした。CBPはガイダンスで、輸入例外を求める際に税関から求められ得る書類の種類や性質を示している。しかしFLWGは、輸入者がこれらの書類を全ての輸入製品とその原材料について、容易に準備できるというCBPの期待は非現実的だと指摘。全ての書類を1度に提出すべきなのか、また各書類を提出させる目的は何かを明確に示すよう要望した。
UFLPAに基づき貨物が差し止められた場合、輸入者は合衆国法典第19編1499条の手続きに従い、税関による貨物の検査開始から原則30日以内に必要書類を税関に提出する必要がある。提言では、このルールの適用を再考し、違反商品保留命令(WRO、注3)に伴う手続きと同様、反証の期間として3カ月間を与えるよう求めた。そのほか、貨物を差し止めた場合に、具体的な根拠を輸入者に示すことなどを提言した。FLWGは、これらの提言に沿って運用ガイダンスが改善されなければ、企業はUFLPAの効果的な順守ができないと記した。
議会は禁輸対象の選定方法を追及
他方、連邦議会からは「UFLPAエンティティー・リスト」に焦点を当てる動きが出ている。同リストには、米国政府が新疆ウイグル自治区で強制労働により物品を生産しているなどとして特定した事業者が指定され、それら事業者が生産した製品もUFLPAによる禁輸対象となる(2022年6月20日記事、2022年6月21日記事参照)。ティム・ライアン議員(オハイオ州)ら民主党下院議員7人は7月12日、CBP局長と国土安全保障長官に宛てた書簡で、いずれも太陽光製品に関わる、中国のジンコソーラー(JinkoSolar Holding)、シンテ・エナジー(Xinte Energy)、ロンジ・ソーラー(Longi Solar)の3社が同リストに指定されていない理由を質問。これら3社はいずれも新疆ウイグル自治区における強制労働への関与が疑われるとして、リスト指定の基準を問いただした。
(注1)COACは、民間企業などの代表者で構成され、財務長官と国土安全保障長官に対し、CBPの運営などについて助言を行う。
(注2)UFLPAについては、ジェトロ特集ページ「ウイグル強制労働防止法」も参照。同ページでは、UFLPAに関する最新動向を随時紹介している。
(注3)CBPは、1930年関税法307条に基づき、強制労働に依拠した製品の輸入を差し止めるWROを発令する権限を有する。米国における人権関連法・規制や、サプライチェーンに関わる規制の運用、実務上の対応などについては、2021年6月25日付地域・分析レポートも参照。
(甲斐野裕之)
(米国、中国)
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