米国土安全保障省、ウイグル強制労働防止法の執行戦略を公表、禁輸対象の事業者を指定
(米国、中国)
ニューヨーク発
2022年06月20日
米国国土安全保障省(DHS)は6月17日、2021年末に成立した中国の新疆ウイグル自治区が関与する製品の輸入を原則禁止する法律(ウイグル強制労働防止法、UFLPA)の執行策をまとめた文書「中国で強制労働により採掘、生産または製造された物品の輸入を防止するための戦略(UFLPA戦略)」を公表した。DHSが率いる強制労働執行タスクフォース(FLETF)はUFLPAに基づき、禁輸措置が発効する6月21日までに同戦略を議会に提出するよう義務付けられていた。
UFLPA戦略は同法の規定に従い、次の内容を含んでいる。
- 中国で強制労働により一部または全部が採掘、生産または製造された物品の輸入リスクの包括的評価
- 中国政府主導の強制労働スキームの評価と説明、UFLPAで特定が義務付けられている事業者などのリスト、特定事業者に対する執行などの計画、優先的に法執行すべき分野
- 法律の影響を受ける物品を正確に特定・追跡するための取り組み、ツール、技術に関わる提言
- 米国税関国境保護局(CBP)が合衆国法典第19編1307条(1930年関税法307条)に基づき、強制労働に依拠する物品の輸入を防ぐための法的権限、ツールの行使を強化する計画の説明
- 強制労働に依拠する物品の輸入を確実に防ぐために必要な追加的資源の説明
- 輸入者向けガイダンス
- 適切な非政府組織(NGO)および民間事業者との協力計画
UFLPA戦略では、(1)新疆ウイグル自治区で強制労働により物品を生産などしている事業者(計10事業者)、(2)同自治区政府と共同してウイグル族などを採用、移送などしている事業者(計10事業者・施設)、(3)(1)または(2)の事業者により生産などされている物品、(4)(3)の物品を中国から米国に輸出した事業者〔(1)および(2)の事業者が相当〕、(5)新疆ウイグル自治区または同自治区政府と協力する事業者から原材料を調達する施設や事業者(計11事業者・施設)をそれぞれ特定している(注1)。この「UFLPAエンティティー・リスト」に指定された事業者により生産された物品は、米国への輸入が原則禁じられる(注2)。優先的に法執行すべき分野としては、アパレル製品、綿・綿製品、ポリシリコンを含むシリカ系製品、トマトおよびその派生製品を挙げている(注3)。
UFLPA戦略の輸入者向けガイダンスでは、(A)中国から強制労働製品を輸入しないためのサプライチェーン・デューディリジェンスなどの指針、(B)中国原産品が新疆ウイグル自治区で生産されていないことを示す証拠の種類・性質・程度、(C)中国原産品が強制労働に依拠していないことを示す証拠の種類・性質・程度を示している。輸入者は、UFLPAの輸入例外を求める場合、ガイダンスを順守する必要がある。
戦略の輸入者向けガイダンスには、CBPが6月13日に公表したガイダンス(2022年6月14日記事参照、注4)と重複する内容も含まれるが、(A)ではデューディリジェンス、サプライチェーンの追跡と管理に関して、その手法や手順をより詳細に説明している。また、デューディリジェンスの実施に対する障害により、輸入者がガイダンスを十分に順守できない場合、輸入例外が認められないことにも言及している。
DHSのアレハンドロ・マヨルカス長官は声明で、「われわれは、正当性のある物品が確実に米国に輸入され、米国の企業と消費者にできるだけ早く届くようにする一方で、(新疆ウイグル自治区を含む世界での強制労働という)非人道的で搾取的な慣行と闘わなければならない」と指摘した。
(注1)一部の事業者については、別称も特定されている。また、子会社や関連会社も合わせて指定されている事業者もある。各リストの事業者・施設には重複がある。
(注2)FLETFを構成する各省庁は、UFLPAエンティティー・リストへの事業者の追加や、既存事業者の削除や修正を勧告できる。同リストについて、FLETFは少なくとも1年に1回、最新の状況を議会に報告する義務がある。
(注3)CBPは6月16日に実施したUFLPAに関するウェビナーの質疑応答で、強制労働のリスクが高い分野はある一方で、法の執行は特定の産業に限定せず、全面的に行うと強調した。CBPが6月に開催した計3回のウェビナーにおける質疑応答の概要は2022年6月20日記事参照。
(注4)CBPのガイダンスの暫定仮訳は、ジェトロ調査レポートを参照。
(甲斐野裕之)
(米国、中国)
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