米ウイグル強制労働防止法に基づく輸入禁止措置が6月21日から有効に、運用実態を注視

(米国、中国)

米州課

2022年06月21日

米国では、中国の新疆ウイグル自治区が関与する製品の輸入を原則禁止する法律「ウイグル強制労働防止法(H.R. 6256、UFLPA)」に基づく輸入禁止措置が、米国時間の6月21日から有効となる。

新疆ウイグル自治区での人権侵害は、トランプ前政権下で強く問題視されるようになった。税関・国境警備局(CBP)は2019年10月以降、1930年関税法307条に基づき、新疆ウイグル自治区での強制労働に関与していることが疑われる製品に対して、相次いで輸入貨物引き渡しを保留する違反商品保留命令(WRO、注1)を発令してきた。人権を理由にしたサプライチェーン規制の強化方針は、バイデン現政権にも引き継がれ、同政権は2021年7月、新疆ウイグル自治区における強制労働のほか人権侵害に関与する事業体が、サプライチェーンに含まれていないか産業界に注意を促す勧告内容を更新した(2021年7月14日記事参照)。

連邦議会でも新疆ウイグル自治区からの輸入禁止を求める声は強く、トランプ前政権下において、下院はUFLPAと同様の法案を2020年に可決していた(2021年12月10日記事参照)。同法案は会期中に成立せず廃案となったが、2021年に上下両院で同様の法案がそれぞれ再提出され、調整を経て12月23日に成立した(2021年12月24日記事参照)。UFLPAは、CBPが例外として認めない限り、新疆ウイグル自治区または新疆ウイグル自治区と関係のある事業体の製品を強制労働の下で生産されたとみなす「反証可能な推定」を盛り込んでいる。

法案成立後、国土安全保障省(DHS)が2022年1月24日からパブリックコメントを募集し(2022年1月24日記事参照)、4月8日にオンライン形式の公聴会を開催(2022年3月17日2022年4月21日記事参照)。また、CBPが6月に入って3回、UFLPAの実施概要に関するウェビナーを開催し(2022年5月26日2022年6月2日2022年6月20日記事参照)、13日には輸入者向けのガイダンスを公表した(2022年6月14日2022年6月17日記事参照)。DHSは17日に、同法の執行策をまとめたUFLPA戦略を公表し(2022年6月20日記事参照)、間もなく実際の運用が開始される。

CBPが公表した輸入者ガイダンスによると、同局はUFLPAに基づき輸入貨物を検査するが、検査開始後5日以内(土日祝日を除く)に解放されない場合、貨物は差し止め扱いとなる。輸入者は強制労働に依拠していないことを証明する「明白で説得的な証拠」を提出した場合に限り輸入を認められるが、サプライヤーが所在国の法律によって情報を開示できない場合であっても、製品は差し止め対象になるとしている。また、UFLPAにデミニミス規定(注2)は存在せず、新疆ウイグル自治区が関わる原材料や部品がわずかでも含まれていれば、輸入禁止措置の対象となる。

DHSはUFLPA戦略の中で、強制労働に関与する事業者をUFLPA事業体リストに指定し、優先的に法を執行すべき分野として、アパレル製品、綿・綿製品、ポリシリコンを含むシリカ系製品、トマトおよびその派生製品を挙げている。DHSが率いる強制労働執行タスクフォース(FLETF)は、UFLPA事業体リストを少なくとも年に1回更新する予定で、DHSやCBPがUFLPAを今後どのように運用していくのか、注目が集まる。

(注1)CBPは、1930年関税法307条に基づき、強制労働に依拠した製品の輸入を差し止めるWROを発令する権限を有する。米国における人権関連法・規制や、サプライチェーンに関わる規制の運用、実務上の対応などについては、2021年6月25日付地域・分析レポート参照。

(注2)規制に抵触する原材料・部品の金額または数量が製品全体に占める割合が少数の場合の例外措置。

(片岡一生)

(米国、中国)

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