米議会、新疆ウイグル自治区からの全面禁輸へ前進、下院法案が可決
(米国、中国)
ニューヨーク発
2021年12月10日
米国議会下院は12月8日、中国の新疆ウイグル自治区からの輸入を原則禁止する「ウイグル強制労働防止法案(H.R.1155)」を賛成428票、反対1票で可決した。今後、上院との調整が進めば、ジョー・バイデン大統領の署名を経て、成立する公算が大きい。
今回の法案が成立した場合、成立から120日後、新疆ウイグル自治区で一部でも採掘・生産・製造された製品は、米国に輸入することができなくなる。例外として、製品が強制労働に依拠していないことが証明されれば、米国税関・国境保護局(CBP)の裁量で輸入が認められる。現行法では、強制労働に依拠した製品の輸入差し止めにCBPによる調査が必要だが、今回の法案が成立すれば個別調査が不要になる(注)。また法案には、同自治区の強制労働に加担する海外の個人・主体をリスト化することを大統領に求め、同リストの対象には米国資産の凍結や米国ビザの発給(入国)禁止などの制裁が科される。
新疆ウイグル自治区からの輸入禁止を求める声は以前から強く、下院は同様の法案を2020年に可決していたが、議会が第117会期(2021年1月3日~2023年1月3日)になったことで廃案になっていた。上院では、マルコ・ルビオ議員(共和党、フロリダ州)が類似の法案(S.65)を提出し、2021年7月に満場一致で可決している。上院の法案は、輸入禁止措置が法案成立の300日後から行われ、CBPに措置実施後の例外適用や規制運用に関わるガイダンスの作成・提出義務を課すなど、下院法案と比べて予見可能性が高い。新疆ウイグル自治区は、綿(製品)・トマト(2021年1月15日記事参照)のほか、太陽光発電機器の原材料の供給源である(2021年6月25日記事参照)ことから、今回の下院通過を受けて、中国の関連企業の株価は落ち込んでいる(ブルームバーグ12月8日)。
米国産業界では、小売業界やアパレル業界などが法案内容の変更を求めている(政治専門誌「ポリティコ」12月6日)。バイデン政権も対象を絞った規制案を望むとして、ウェンディ・シャーマン国務副長官が議員と協議したとされる(「ワシントン・ポスト」紙12月2日)。ルビオ上院議員は、政権と大企業が協力して法案成立を阻んでいると批判している。
上下両院でそれぞれ可決した法案は、両院協議会(conference committee)での審議を通じて、両法案の相違点を解消した上で、議会を通過すれば、大統領の署名をもって成立する。他方、法案を単独で審議するか、対中競争を念頭に置いた「米国イノベーション・競争法案(USICA、S.1260)」の一部として扱うかをめぐり議員の意見が割れているなど、成立に向けて不透明さが残る。この分野に詳しい通商弁護士は、2021年末または2022年早期に法案が成立する可能性を指摘している(2021年11月11日記事参照)。
(注)CBPによる強制労働に依拠した製品への輸入差し止めに関する詳細は、2021年6月25日付地域・分析レポート参照。
(藪恭兵)
(米国、中国)
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