米税関、新疆ウイグル自治区からの綿・トマト製品輸入を全面的留保、米業界団体は支持
(米国、中国)
ニューヨーク発
2021年01月15日
米国税関国境保護局(CBP)は1月13日、中国の新疆ウイグル自治区での強制労働を理由に、同自治区からの綿とトマト、それらの派生製品の輸入を留保すると発表した。CBPはこれまでも同自治区への保留命令を講じてきたが、対象企業を問わない全面的な措置は初となる。
CBPが13日に発出した違反商品保留命令(WRO)は、綿製の衣類や生地などの綿製品、トマト缶、トマトソースなどのトマト製品を対象に含む。CBPによると、2020年の対中輸入実績では、綿製品が90億ドル、トマト製品は1,000万ドルに相当する(通商専門誌「インサイドUSトレード」1月13日)。CBPはこれまで、新疆生産建設兵団(XPCC)など個別企業や拠点に対するWROを講じていた(2020年12月7日記事参照)が、今回の措置は新疆ウイグル自治区で生産を行う全ての主体を対象としている。米国内の税関で留保された場合、輸入者は別の国・地域に輸出するか、強制労働により生産された製品ではないと証明するかを選択することになる。
CBPは今回の措置について、新疆ウイグル自治区で拘留者や刑務労働の利用、強制労働の状況を合理的に示す情報があったことをWROの根拠としている。CBPは、同自治区に対する調査の結果、ILOが強制労働に指定する借金による身柄の拘束や、移動の制限、隔離、脅迫、給与の差し止め、生活・労働環境上の虐待行為などがあったことを確認している。CBPは2020会計年度(2019年10月1日~2020年9月30日)に13回のWROを発出したが、そのうち8回で新疆ウイグル自治区の強制労働を対象としている(注1)。一方、中国外交部の趙立堅(Zhao Lijian)報道官は「『強制労働』と呼ばれるものは、米国を含めた特定の西側諸国が捏造(ねつぞう)したもの」と反論している(「ブルームバーグ」電子版1月13日)。
アパレルや小売りに関連する米国内の業界団体(注2)は、今回の措置が新疆ウイグル自治区の強制労働の撲滅を目指す会員企業の取り組みに合致するとの声明を連名で発表した。また、業界団体は今回集めた証拠とWROの判断基準の開示や、デューデリジェンス(事前調査)に向けた取り締まりに関する情報共有をCBPに求めている。民主党のジョー・バイデン次期大統領は選挙キャンペーン中に、新疆ウイグル自治区での人権抑圧を「受け入れがたい」と表明し、抑圧に加担する個人や企業に対し、制裁などを通じて責任を課す方針を示している。
(注1)これまでに発表されたWROはCBPのウェブページで確認できる。
(注2)全米アパレル履物協会(AAFA)や全米小売業協会(NRF)、小売業リーダー協会(RILA)、米国ファッション業協会(USFIA)の4団体が共同声明を発出している。
(藪恭兵)
(米国、中国)
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