米税関、強制労働に関わる輸入差し止め、2021年度は前年度比約5倍に

(米国)

ニューヨーク発

2022年04月27日

米国税関国境保護局(CBP)は4月15日、2021会計年度(2020年10月~2021年9月)の「貿易・渡航報告書」を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。報告書には、2021年度の旅行者数の動向や貿易救済措置などの執行状況が記述されている。

CBPが2021年度に処理した輸入貨物は2兆8,000億ドルと、前年度比で3,800億ドル増えた。徴収した関税額は14.9%増の855億ドルとなった。関税徴収額の内訳をみると、1974年通商法301条に基づく対中追加関税措置による徴収額が29%増の440億ドルと過半を占めた。そのほか、1962年通商拡大法232条に基づく鉄鋼製品に対する追加関税措置により16億ドル、同条に基づくアルミニウム製品に対する追加関税措置により4億4,500万ドル、1974年通商法201条に基づくセーフガード措置により9億5,500万ドルをそれぞれ徴収した(注1)。

2021年度に新たに適用されたアンチダンピング税(AD)および相殺関税(CVD)は96件に上り、同年度末時点で有効なAD・CVDは合計634件となった(2020年度末時点では540件)。対象品目の輸入は302億ドルで、AD・CVDに基づき24億ドルを徴収した。

CBPは2021年度に、強制労働を理由に輸入を差し止める違反商品保留命令(WRO)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを新たに7件発表し、有効なWROは同年度に49件を記録した(注2)。新規WROは前年度(13件)に比べ半減した一方、WROに基づき差し止められた貨物の数は4.7倍の1,469、金額は9.8倍の4億8,600万ドルに急増した。報告書によると、差し止められた製品の原産国はほとんどが中国だったが、その多くはマレーシアから輸入された。CBPは2021年1月に、中国新疆ウイグル自治区からの綿とトマト、それらの派生製品(2021年1月15日記事参照)を対象にWROを発令した。同WROは、対象企業を問わない包括的な内容だったことから、輸入差し止めの増加に寄与したとみられる。

他方、CBPは労働環境の改善などを理由に、マラウイ(たばこ)、ブラジル(骨炭)、ネパール(手編みのウールじゅうたん)、マレーシア(使い捨てゴム手袋、2021年9月17日記事参照)の生産者からの輸入を再開した。

強制労働への対応をめぐって、報告書では2020年7月に発効した米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の条項に基づく、カナダ、メキシコ両政府との協力にも言及している。CBPのクリス・マグナス局長はプレスリリースで、CBPは2021年度に「強制労働と戦うために類まれな行動を続けた」と指摘した。

(注1)セーフガード措置は、大型家庭用洗濯機・同部品と太陽光発電製品が対象。前者に対するセーフガード措置は、2021年2月に失効の予定だった(2018年1月29日記事参照)が、ドナルド・トランプ大統領(当時)が延長を決定し、現在は2023年2月7日が期限となっている。後者についても、2022年2月に失効予定だったが、ジョー・バイデン大統領が一部を除き、4年間の延長を決定している(2022年2月7日記事参照)。

(注2)米国における人権関連法・規制や、サプライチェーンに関わる規制の運用、実務上の対応などについては、2021年6月25日付地域・分析レポート参照。

(甲斐野裕之)

(米国)

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