EU首脳、新型コロナ対策や復興政策の進展歓迎も、一部対立も鮮明に
(EU)
ブリュッセル発
2021年06月28日
欧州理事会(EU首脳会議)が6月24、25日、ブリュッセルで開催され、新型コロナウイルス対策や経済復興、ロシアやトルコなどの外交問題、移民政策等など協議した。
25日に採択された総括によると、欧州理事会はEU域内でのワクチン接種の順調な進展(2021年6月23日記事参照)や、7月1日から正式に運用が開始されるEUデジタルCOVID証明書(2021年6月2日記事参照)、同証明書を活用した域内の移動制限緩和に関するEU理事会(閣僚理事会)勧告(2021年6月15日記事参照)などを歓迎した。域外国からの入域に関しては、不要不急の入域制限を緩和する新たなEU理事会勧告(2021年5月21日記事参照)を歓迎したものの、欧州理事会に先立ち、ウイルスのデルタ変異株の域内流行を懸念し、ドイツなど一部加盟国が求めていたより協調的な措置に関する発表はなかった。デルタ変異株による感染が急速に拡大する英国(2021年6月16日記事参照)は、EUの勧告による入域制限解除国・地域リスト(2021年6月21日記事参照)に含まれていないが、英国からの入国をめぐっては、原則入国禁止から検査不要での入国許可まで、加盟国により対応が異なっている。欧州疾病予防管理センター(ECDC)は、8月末までにEU域内での感染の9割がデルタ変異株になるとの予測を発表している。
経済復興に関しては、復興基金の正式な始動(2021年6月2日記事参照)を歓迎するとともに、その中核部分である「復興レジリエンス・ファシリティー(RRF)」の予算を加盟国が早期に執行できるよう、各加盟国が策定した「復興レジリエンス計画」の欧州委員会による審査とEU理事会による承認を速やかに進めるよう求めた。欧州理事会後の記者会見で、EU理事会の議長国を務めるポルトガルのアントニオ・コスタ首相は、欧州委の審査が既に完了している12カ国の復興レジリエンス計画については、7月13日開催のEU理事会での承認を目指すとし、欧州委のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、EU理事会が承認し次第、前払い分の予算執行をすると述べた(2021年6月18日記事参照)。
ハンガリーの反LGBT法案めぐり、対立鮮明に
同じく記者会見で、欧州理事会のシャルル・ミシェル常任議長は、もともとの議題には上がっていなかった性的少数者(LGBT)に関する描写を規制するハンガリーの国内法案に関して、協議したことを明らかにした。この問題をめぐっては、欧州委は6月23日に、同法案が性的少数者に対して差別的であり、EUの基本的価値に反するとして、法的措置を念頭に、ハンガリーに対して書簡を送ると発表していた。また、17加盟国の首脳が連名で、EUの基本的価値を擁護し、性的少数者に対する差別に強く反対するとの書簡を発表するなど、ハンガリーへの圧力を強めている。コスタ首相は、同法案がEUの基本的価値に反するとの意見をほとんどの加盟国が明確にしており、EUの基本的価値を尊重しない加盟国はEUにとどまるべきでないと述べた。
(吉沼啓介)
(EU)
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