EU理事会、域外国からの入域制限を緩和する勧告採択
(EU)
ブリュッセル発
2021年05月21日
EU理事会(閣僚理事会)は5月20日、EU域外からの不要不急の入域制限を緩和する勧告を採択した(注)。勧告は2月2日のEU理事会勧告(2021年2月3日記事参照)を修正するもので、5月3日に欧州委員会が世界各国で新型コロナウイルスワクチン接種の進展していることを考慮して、EU理事会に緩和を提案したことを受けたものだ(2021年5月6日記事参照)。主な修正点は、(1)不要不急の入域制限解除国の基準緩和、(2)ワクチン接種完了者への入域制限緩和、(3)疫学的状況の急激な悪化に対応するための「緊急抑制メカニズム」の導入の3点。
「デジタル・グリーン証明書」との同等性も今後ルール化
EU理事会が指定する不要不急の入域制限解除国の基準については、指定基準の1つである直近14日間の10万人当たり新型コロナウイルス新規感染者数を、従来の25人から75人に引き上げた。5月3日の欧州委提案(同100人)に比べ緩和の程度は抑えた上、各国での変異株感染拡大の動向も考慮することも基準に追加したことから、勧告採択の過程で加盟国から変異株拡大に対する警戒感が示されたことがうかがわれる。
また、加盟国がEU域外国からの不要不急の入国でワクチン接種者への検査や検疫を免除する場合、欧州医薬品庁(EMA)が承認した、いずれかの新型コロナウイルスワクチンの接種完了から14日以上経過した渡航者を対象とすべきと勧告した。世界保健機関(WHO)が緊急使用リストに登録したワクチンの接種者も免除の対象にすることができる。今後、EUが導入を予定する「デジタル・グリーン証明書」(2021年4月23日記事参照)が採択された場合、欧州委の実施法令によって域外国のワクチン証明書の同等性を認める条件を定めるとし、それまでの間は当該の証明書が本人確認やワクチン接種日など必要最低限の情報を含むことや、証明書の真正性などを考慮して各加盟国がその有効性を判断することとした。
勧告ではさらに、域外国・地域で疫学的状況の急激な悪化、とりわけ、懸念される変異株が検出された場合、加盟国は例外的な措置として「緊急抑制メカニズム」を発動し、一時的に当該国からの入国を速やかに制限すべきとした。同措置はEU市民や長期滞在者、特定の必要不可欠な渡航者には適用しないが、入域の際にはワクチン接種を完了している場合でも検査や検疫の対象となるべきとした。
(注)シェンゲン協定に加盟していないアイルランドを除くEU加盟国と、シェンゲン協定に加盟するアイスランド、ノルウェー、スイス、リヒテンシュタインが勧告の対象。アイルランドは勧告に協調することを決定すれば含まれる。
(安田啓)
(EU)
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