EUの新型コロナのデジタル・ワクチン接種証明書、加盟国と技術仕様に合意

(EU)

ブリュッセル発

2021年04月23日

欧州委員会は4月22日、EU加盟国のeヘルス(医療・健康分野への情報通信技術の活用)監督機関のプラットフォーム「eヘルス・ネットワーク」が、新型コロナウイルスのワクチン接種歴や感染検査結果、回復証明を示す「デジタル・グリーン証明書」(2021年3月18日記事参照)のシステム運用に関する主要な技術仕様を定めたガイドライン外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに同意したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。加盟国は独自に証明書発行システムを開発する必要があるが、EUレベルで土台となる仕組みに合意したことで、早期の開発につながると見込まれる。欧州委は目標とする6月までのEU全域での証明書の運用開始へ向け、大きな前進になったと強調した。

ガイドラインでは、EU域内のどこであっても証明書を確実に読み取り、認証するために必要なデータ構造(data structure)とQRコードを含むエンコード方法(encoding mechanisms)、また、欧州委が立ち上げる、発行元の電子署名を共有し、証明書の真正性を確認するシステム「EUゲートウェイ」について規定している。その他、証明書を発行するソフトウエアや、認証のための参照アプリ、利用者が証明書を管理するアプリのテンプレートについて、リファレンス実装(注)を定めている。欧州委は5月中旬までにリファレンス実装を公開して加盟国が利用できるようにし、「EUゲートウェイ」も5月に試験運用を行い、6月1日以降、加盟国が接続して正式に運用することを目指している。既に多くの加盟国が試験運用への参加を表明しており、欧州委は必要な場合、各国のシステム開発に当たって技術的・財政的支援も行う。

証明書の運用開始へ、立法措置も進行中

欧州委が3月17日に提案した証明書に関する規則案の審議プロセスも動き出した。EU理事会(閣僚理事会)は4月14日、欧州議会との交渉に向けた方針に合意し、議会側も4月26~29日の本会議会期中に方針を採決する予定で、両機関による協議が近く始まる見込みだ。同法案について、EU理事会と欧州議会の双方は既に、証明書が渡航の必要条件となってはならないことや、EUの法令にのっとった利用者の個人データの十分な保護の必要性などを指摘している。また、デンマークが4月14日に運用を開始した、ワクチン接種歴や72時間以内に受けたPCR検査の結果を示すデジタル証明書「Coronapas(コロナパスポート)」(紙版も併用)など、加盟国が既に独自に運用しているシステムとの区別の明確化に関する意見もあり、協議の行方が注目される。

(注)他者がそれを参考にして独自に実装することを助ける目的で作られたハードまたはソフトウエアのこと。

(滝澤祥子)

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