欧州委、新型コロナワクチン接種など証明書の発行枠組み法案発表
(EU)
ブリュッセル発
2021年03月18日
欧州委員会は3月17日、2月の欧州理事会(EU首脳会議)(2021年3月1日記事参照)で表明していた新型コロナウイルスのワクチン接種などの証明書に関するEUレベルの枠組みに関する法案を発表した。EU域内の移動が一部制限されている現状を鑑み、EU加盟国間で互換性を持った「デジタル・グリーン証明書(Digital Green Certificate)」を導入することで、域内の移動の円滑化を図るものだ。欧州委は、証明書はワクチン接種を強制するものではなく、ワクチン接種は域内の移動の前提条件になるものではないと強調した。
証明書を発行するのは各加盟国で、発行国の公用語と英語で記載され、スマートフォンなどで表示可能なデジタル版のほか、紙でも発行する。証明書には利用者の氏名や生年月日、発行国、証明書の識別番号などの基本情報と、証明書の真正性の確認ができる発行元の電子署名を含んだQRコードが付けられる。さらに、証明書の種類に応じて、以下の情報が含まれる。
- ワクチン接種証明(ワクチンの種類と製造元、接種回数、接種日)
- 陰性結果証明(PCR検査や迅速抗原検査など検査の種類、検査日時、検査場所)
- 回復証明(陽性判定の日付、証明の発行元、発行日、有効期間)
欧州委は、各加盟国の電子署名の一元的な管理システムを構築する予定で、加盟国当局は欧州委のシステムに接続することでQRコードを読み取るだけで証明書を認証することができるようになる。
証明書は全加盟国(注)で有効だが、証明書の保持者に対する到着前の検査や入国後の自主隔離などの制限措置(2021年2月3日記事参照)の免除といった具体的な活用法は各加盟国が決定する。ただし、欧州委が販売承認しているワクチン(2021年3月12日記事参照)を接種済みの入国者に対して加盟国が免除措置を取る場合には、ワクチン接種証明書の保持者に対しても同一条件で免除措置を適用することが求められる。EUで未承認ワクチンの接種者に対する免除措置の適用については、各加盟国が独自に決定することになる。証明書はEU国籍保持者だけでなく、日本を含むEU国籍以外の各加盟国の長期滞在者や短期訪問者にも無償で発行される予定だ。
欧州委は、夏の観光シーズンが迫る中、EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会に対し法案の速やかな採択を求めているが、加盟国間では、旅行などの医療目的以外での証明書の活用に関して合意ができておらず、早期の採択は不透明な情勢だ。
なお、欧州委は同じく17日、政策文書「安全で持続可能な再開に向けた共通の道筋」を発表しており、3月25、26日に開催が予定されている欧州理事会(首脳会議)で協議される見込みだ。
(注)シェンゲン協定に加盟するアイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイスも導入が認められる。
(吉沼啓介)
(EU)
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