EU首脳、ワクチン接種の共通証明書の検討継続で一致

(EU)

ブリュッセル発

2021年03月01日

欧州理事会(EU首脳会議)は2月25、26日、非公式会合をオンラインで開催し、新型コロナウイルス対策、安全保障、北アフリカなどの南方近隣国との協力関係などついて声明PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した。欧州理事会のシャルル・ミシェル常任議長と欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長による記者会見で、ミシェル常任議長は、ワクチン接種を進めることが最優先事項とし、EU加盟国の首脳陣は欧州委によるワクチンの増産や変異株対策に向けた製薬会社などへの働き掛け(2021年2月18日記事参照)を支持していると、EU内での結束をアピールした。

フォン・デア・ライエン委員長は、英国型の変異株が既にEU27加盟国中26カ国で検出されており、南アフリカ型やブラジル型の変異株もEU域内で広がりつつあると懸念を示した。また、ワクチンの接種状況に関しては、2月末までにEU全体で5,000万回分以上のワクチンの提供を受ける予定で、2月25日時点でEUの成人人口の約8%に当たる2,900万回分の接種が実施されたと報告。ワクチン提供に遅れが生じている中、1月に発表した、「夏の終わり」までに成人人口の7割という接種目標(2021年1月25日記事参照)は依然、達成可能と自信をみせた。ただし、2月12日の会見で「夏の終わり」とは9月21日とし、若干の修正を示唆している。また、EUからのワクチンの輸出規制(2021年2月1日記事参照)に関しては、現状では規制対象ワクチンの輸出の約95%はドイツ・ビオンテックと米国ファイザー製のもので、残りが米国モデルナ製だとし、これらのメーカーによる契約の履行に関しては特に問題はない、と述べた。しかし、英国アストラゼネカに関しては依然として履行状況に改善の余地があり、契約の完全な履行を求め、引き続き注視する、と不満をにじませた。

ワクチン接種などの証明書に関しては、ミシェル常任議長は、旅行時の利用などを認めるかについて加盟国首脳間での意見の不一致は依然残るものの、EUの共通枠組みの検討を続けることで一致したことを評価した。フォン・デア・ライエン委員長は、証明書に関するデジタル技術に関連して、米国のグーグルやアップルが世界保健機関(WHO)に協力を提供していることに言及した上で、EU独自の解決策が必要と強調し、加盟国間での互換性など技術面での準備を今後3カ月で進める予定だとした。

また、移動制限に関しては、加盟国首脳は必須でない旅行の制限の必要性で一致し、EU理事会の勧告(2021年2月3日記事参照)を歓迎したものの、一部の加盟国による国境封鎖や国外旅行の禁止措置などに関しては、域内での物流の確保を優先し、同勧告に基づき過度に制限しないことで合意するにとどまった。

(吉沼啓介)

(EU)

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