欧州理事会、EU加盟国の速やかなワクチン接種実施を再確認

(EU)

ブリュッセル発

2021年01月25日

欧州理事会(EU首脳会議)は1月21日、新型コロナウイルス対策に関する非公式会合をオンラインで開催した。会合では、欧州委員会が19日に発表したEUレベルの新たな対策を盛り込んだ政策文書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)などを中心に議論した。

この政策文書では、EU全加盟国を対象に、医療・福祉施設従事者と80歳以上の高齢者の少なくとも80%以上に対するワクチン接種を3月まで、成人の総人口の少なくとも70%以上に対するワクチン接種を2021年夏(8月末)までに実施する目標を掲げた。欧州委のマルガリティス・シナス副委員長は19日の会見で、ワクチン接種の数値目標は「完全に実行可能なものだ」と自信を見せた。また、一部の加盟国で従来よりも感染力が高いとされる新たな変異種が確認されていることを受け、変異種の判定に必要なシークエンス解析の実施を緊急に拡大させる必要があるとし、陽性結果のうち少なくとも5%、できれば10%を目標に全加盟国で実施すべきとした。現状では、シークエンス解析はほとんどの加盟国で実施されていない。

欧州理事会後の21日の記者会見で、シャルル・ミシェル常任議長は欧州委の提示した数値目標には言及しなかったものの、各加盟国でワクチン接種を滞りのないようさらに進めていくことを再確認したとするなど、政策文書の方向性を支持した。一部の加盟国が提案していた不要不急の旅行に関するEUレベルの制限措置に関しては、EUの単一市場の機能維持の観点から、国境封鎖や無差別な旅行禁止措置には反対するものの、EUレベルの共通措置を検討する必要があるとし、加盟国と協議を続けると述べるにとどめた。また、ワクチン接種の証明書に関して、EUレベルの標準化の必要性で合意し、具体的な仕様を今後策定するとした。しかし、現時点では、証明書の用途は医療目的に限定するとし、旅行時の利用など制限措置の緩和目的での活用は時期尚早とした。

さらに、EU理事会(閣僚理事会)は21日、新型コロナウイルス検査に関する新たな勧告PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を承認した。勧告はPCR検査を補足するものとして、特に陽性者との濃厚接触者やクラスターの発生時などには、迅速抗原検査を実施することを推奨している。また、検査結果の加盟国間での相互承認や、相互承認を前提に、使用が推奨される迅速抗原検査キットをまとめたリストの策定、デジタル仕様の検査結果証明(迅速抗原検査とPCR検査を含む)の標準化も勧告した。

(吉沼啓介)

(EU)

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