EU理事会、新型コロナワクチン証明書を活用した域内の移動制限緩和を勧告
(EU)
ブリュッセル発
2021年06月15日
EU理事会(閣僚理事会)は6月14日、EU域内〔欧州経済領域(EEA)に参加するアイスランド、ノルウェー、リヒテンシュタインを含む〕の移動の自由制限の緩和に向けた勧告の採択を発表した。勧告は5月31日の欧州委員会提案(2021年6月1日記事参照)に大筋沿っており、2月1日付のEU域内での移動の自由制限に関する勧告を改正するものだ。
今後、加盟国は「EUデジタルCOVID証明書」を活用し、域内の移動で新型コロナウイルスワクチン接種完了者や回復者などに対する検査や自主隔離を原則免除すべきと勧告した。PCR検査(72時間以内)や迅速抗原検査(加盟国が認める場合には48時間以内)の陰性結果証明書の保持者に対しても、自主隔離を免除すべきとした。
ただし、陰性結果証明書を保持していない渡航者に対し、各加盟国は、欧州疾病予防管理センター(ECDC)が感染状況に応じて作成する色分けマップに基づき、「オレンジ」指定地域からの入国の場合は到着後の検査義務を、「赤」指定地域(データ未提供による「グレー」地域を含む)からの入国の場合には、到着後の検査義務と陰性結果が出るまでの間の自主隔離義務を、それぞれ課すことができる。また、最も感染状況が高い「濃い赤」に指定された地域や、特に懸念される変異株の流行地域をまたぐ不要不急の移動について、各加盟国は引き続き強く自粛を求めるべきとした。6月10日時点では、域内の大部分はオレンジや赤、または移動制限措置のない緑に指定されており、濃い赤の指定はほぼなくなっている。
このほか、今回の勧告には、感染状況が急激に悪化している地域や特に懸念される変異株の流行地からの渡航者に対し、加盟国が検査や自主隔離措置を一時的に課すことができる「緊急抑制メカニズム」の導入や、自主隔離を課さない親に同伴する子どもの自主隔離の免除と12歳未満の子どもの検査免除も含まれる。
また、今回の勧告により、ECDCの色分けの基準となる(1)14日間の10万人当たりの新規感染者数の合計と、(2)7日間に実施された検査の陽性結果の割合を以下のとおり、一部緩和した。
- 緑:(1)が50人未満かつ(2)が4%未満、または(1)が75人未満かつ(2)1%未満。
- オレンジ:(1)が50人未満かつ(2)が4%以上、または(1)が50人以上75人未満かつ(2)が1%以上、または(1)が75人以上200人未満かつ(2)が4%未満。
- 赤:(1)が75人以上200人未満かつ(2)が4%以上、または(1)が200人以上500人未満。
- 濃い赤(変更なし):(1)が500人以上。
各加盟国は今後、この勧告を考慮した上で、独自の判断により制限措置を緩和するとみられる。
「EUデジタルCOVID証明書」規則も正式採択
欧州委はまた14日、EU理事会と欧州議会が「EUデジタルCOVID証明書」の設置規則(2021年5月24日記事参照)に署名したと発表。これにより、7月1日からの同証明書のEU全体での導入が正式に決定した。6月14日時点では、既に13の加盟国が同証明書の発行(2021年6月2日記事参照)を開始している。
(吉沼啓介)
(EU)
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