欧州委、新型コロナワクチン接種証明書の相互承認へ米国と協議開始
(EU、米国、英国)
ブリュッセル発
2021年04月28日
欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は4月25日、欧州医薬品庁(EMA)が承認した新型コロナウイルスワクチン(2021年3月12日記事参照)の接種を前提に、今夏の観光シーズンに向け、米国からEUへの観光など必須でない渡航を解禁する方向性を示唆した。フォン・デア・ライエン委員長が米「ニューヨーク・タイムズ」紙のインタビューで語ったものだ。
この報道を受け、欧州委の報道官は翌26日、EU域内の運用に向けて準備が現在進む「デジタル・グリーン証明書」(いわゆるワクチン接種証明書、2021年4月23日記事参照)と米国の同様の証明書との相互承認に関して、米国当局と技術的な協議を進めていることを認めた。ただし、米国以外のEU域外国が発行するワクチン接種証明書の承認をめぐっては、米国同様にワクチン接種が進む英国との協議は始まっていない点は明言したものの、そのほかの域外国との協議の有無に関しては言及を避けた。
現状では、EU域外からEUへの入域は、EU理事会(閣僚理事会)の2月2日付勧告(2021年2月3日記事参照)に基づき、不要不急の入域制限解除国に指定している国以外(日本も含む)は、必要不可欠な渡航と判断できる場合のみ入域を認めており、PCR検査の陰性結果証明の提出や自主隔離の実施などを加盟国に求めている。欧州委は、他国でのワクチン接種状況や接種証明書などの進展を踏まえ、EU理事会の勧告の改定に向けた検討を始めたことも明らかにした。
7月までにEU域内の成人人口の7割がワクチン接種の見通し、アストラゼネカへは法的措置開始
米ファイザーとドイツのビオンテックによる2021年第2四半期(4~6月)のワクチン供給予定量が2億5,000万回分になる(2021年4月22日記事参照)など、EUではワクチン供給状況が改善しつつある。こうした加速を受け、フォン・デア・ライエン委員長は23日、EU域内の成人人口の70%に対するワクチン接種の達成時期を従来の9月(2021年3月1日記事参照)から7月に前倒しできる見通しだと発表した。供給強化に努めるファイザー・ビオンテックを称賛する一方で、供給遅延が続く英アストラゼネカ(2021年3月22日記事参照)に対しては、欧州委の報道官は26日、同社が事前購入合意を順守しておらず、予定どおりの供給を実現するための信頼できる対策を講じていないとして、法的措置を開始したことを発表した。欧州委は、今後も同社製のワクチンをEUのワクチン接種戦略の重要な一部として利用を推進し、同社に対してワクチンの迅速な供給を引き続き求めていくとしているが、欧州委と同社の対立は今後も続きそうだ。
(吉沼啓介)
(EU、米国、英国)
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