米商務省、中国企業11社を輸出管理対象に追加、新疆ウイグル自治区での人権侵害を理由に
(米国、中国)
ニューヨーク発
2020年07月21日
米国商務省産業・安全保障局(BIS)は7月20日、中国の新疆ウイグル自治区での少数民族に対する人権侵害に関与しているとして、中国企業11社を輸出管理規則(EAR)に基づくエンティティリスト(EL)に追加すると明らかにした。正式には7月22日付の官報で公示する。
ELには、米政権が「米国の国家安全保障または外交政策上の利益に反する行為をした」と判断した団体や個人が掲載され、それらへ米国製品(物品・ソフトウエア・技術)を輸出・再輸出・みなし輸出する場合には、事前許可が必要となる。今回新たに掲載された企業への輸出許可審査は、医薬品など一部の製品については「案件ごとの審査(Case-by-case review)」とし、それ以外は「原則不許可(presumption of denial)」の扱いとなっている。
BISはELへの追加理由として、11社がウイグル族などに対する強制労働、もしくは抑圧目的での遺伝情報の収集・分析に関与していることを挙げた。前者には、米国衣服ブランドにも繊維製品を提供している、香港本拠のエスケル・グループが新疆ウイグル自治区に有する拠点や、米国アップルなどにカメラやタッチパネル製品などを提供している、欧菲光集団(オーフィルムテック・グループ)の南昌拠点など9社が含まれる。後者には、ゲノム解析大手の華大基因(BGI)の子会社2社が指定された。BGIグループは、新型コロナウイルス用検査キットを80カ国以上に提供しており、米国でも3月末に食品医薬品局(FDA)から緊急使用許可を受けている。しかし、米政府当局者は、同グループがイスラエルなど中東の米同盟国と新型コロナウイルス検査に関する契約を締結していることに関し、同グループは「遺伝子分野のファーウェイだ」として、要人の個人情報を中国政府に渡すことになる、と警告しているとされる(「ブルームバーグ」5月20日)。
BISは今回と同様の理由で、2019年10月に中国の監視カメラ大手などを、2020年6月には中国公安部の関連組織をELに追加した(2019年10月9日記事、2020年5月27日記事参照)。また、トランプ政権は7月に入り、新疆ウイグル自治区での人権侵害への対抗措置を立て続けに発表している。1日には人権侵害状況を精査する諮問機関を立ち上げ(2020年7月9日記事参照)、9日には中国共産党幹部らを制裁対象に指定、15日には人権侵害に加担しているとしてファーウェイなど中国企業社員への米入国ビザ制限を発表した。さらに、BISは17日、同自治区での人権侵害に転用され得る顔認証技術などを輸出管理対象にすべきか、パブリックコメントの募集を開始した(2020年7月20日記事参照)。
(磯部真一)
(米国、中国)
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