米商務省、中国の自治体や企業など28団体を輸出規制対象に追加、人権侵害を理由に
(米国、中国)
ニューヨーク発
2019年10月09日
米国商務省は10月7日、中国の新疆ウイグル自治区でのウイグル人やイスラム教徒に対する人権侵害に関与しているとして、中国の自治体公安当局や民間企業など28団体を輸出管理規則(EAR)に基づくエンティティー・リスト(EL)に追加すると発表した。この措置は10月9日に予定されている連邦官報の公表をもって有効となる。ウィルバー・ロス商務長官は「今回の措置は、個人の自由と自由な企業活動が保障された環境で生み出されたわれわれの技術が無防備な少数民族の弾圧のために使われないことを確実にする」としている。
ELには、米政権が「米国の国家安全保障または外交政策上の利益に反する行為をした」と判断した団体や個人が掲載され、それらへ米国製品(物品・ソフトウエア・技術)を輸出・再輸出・みなし輸出する場合には事前に許可が必要となる。今回新たに掲載された企業への輸出・再輸出は、医薬品など一部の製品については「案件ごとの審査(Case-by-case review)」とし、それ以外は「原則不許可(presumption of denial)」の扱いとなっている。
今回ELに追加された中国の民間企業は8社で、中には監視カメラ大手のハイクビジョンやダーファ、人工知能(AI)を用いた顔認証技術などを開発するセンスタイム、メグビーなど、世界でも存在感を示す企業が含まれている。ハイクビジョンとダーファは、8月から米政府機関による調達禁止の対象にもなっている(2019年8月9日記事参照)。
今回の措置は、10月10、11日にワシントンで開催予定の米中貿易交渉の閣僚会合の直前での発表となった。商務省の報道官は、今回の措置と米中貿易交渉は無関係としているが、米国の有識者は、交渉に影響する可能性を指摘している。米中問題に詳しい米戦略国際問題研究所(CSIS)のマシュー・グッドマン上級副所長は「今回の措置は今週の米中協議を複雑にするだろう。中国側にとってこのタイミングは都合が悪い」と評している(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版10月8日)。
規制対象となったハイクビジョンの広報担当者は、元米政府高官を顧問として採用し、これまでトランプ政権に対して同社に関する誤解を解く努力を積み重ねてきたことに触れた上で、「こうした努力にもかかわらずハイクビジョンを制裁対象にすることは、グローバル企業が米政府と対話する意欲をそぐとともに、米国における当社のパートナーを傷つけ、米国経済にマイナスの影響を与える」と批判している(米政治紙「ポリティコ」10月8日)。
(磯部真一)
(米国、中国)
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