米トランプ政権、中国・新疆ウイグル自治区のサプライチェーンに対する調査開始、強制労働を問題視
(米国、中国)
ニューヨーク発
2020年07月09日
米国トランプ政権は7月1日、中国の新疆ウイグル自治区が関係するサプライチェーンが強制労働や人権侵害を伴うものかを精査する諮問機関の立ち上げを発表した。これまで商務省が指定してきたエンティティー・リスト(EL)に該当する同自治区の37の企業・団体が主な対象となる。米政府は既に一部で輸入差し止めの措置を行っており、今後、措置が拡大する恐れがある。
諮問機関は国務省と財務省、商務省、国土安全保障省で構成する。中国政府が同自治区でウイグル族など少数民族への人権抑圧を行っているとして、その支援を行う企業・団体を審査する。具体的には、中国政府の監視ツールの開発支援や、製造や調達における強制労働への依存、ウイグル族や少数ムスリム族の収容施設や強制労働を行う製造工場の建設への関与をサプライチェーン上の人権侵害の典型例に挙げた。監視ツールの支援については、地元警察がモバイルアプリで監視を行っているとし、1週間で約2万人の個人が拘留対象として特定されているとの報告を紹介した。強制労働に関しては、収容施設での職業訓練とその後の強制労働が横行し、中国で生産される綿製品の84%が同自治区で製造されていると指摘している。
トランプ政権はこれまでも中国政府による人権侵害への対抗措置を行っている。2019年10月には新疆ウイグル自治区の人権侵害に加担したとして、中国の監視カメラ大手のハイクビジョンや顔認証技術を開発するセンスタイムなどをELに追加し、5月にも中国公安部の関連組織などを同リストに加えている(2019年10月9日記事、2020年5月27日記事参照)。5~6月には、米税関・国境保護局(CBP)が、同自治区に所在する一部企業の髪製品(かつらやウィッグなど)が刑務所での長時間労働などに基づく強制労働により生産されたとして、同製品に対する輸入差し止め措置をしている。
諮問機関は対象企業・団体の人権順守を求めるとともに、事態が改善しない場合の対抗措置を列挙している。従来の輸出管理規則上の罰則に加え、強制労働に依拠する製品輸入の差し止めや、輸入者などに対する民事上の罰則や刑事責任追及の可能性も指摘している。強制労働を認識しているにもかかわらず便益を得ている米国企業に対しては、米国法に基づき最高50万ドル、または経営層に対して20年以下の懲役を科す可能性がある。また、6月にトランプ大統領が署名した「2020年ウイグル人権政策法」や財務長官権限に基づく制裁も科すとしている。
(藪恭兵)
(米国、中国)
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