米商務省、中国の33企業・団体を輸出規制対象に追加、AI関連企業も対象に
(米国、中国)
ニューヨーク発
2020年05月27日
米国商務省産業安全保障局(BIS)は5月22日、中国の政府系団体や民間企業など24組織体を輸出管理規則(EAR)に基づくエンティティ・リスト(EL)に追加すると明らかにした。官報に正式に公示した時点より、米国から該当組織への輸出などが規制対象となる。
BISはELへの追加理由として、対象となった企業・団体が中国で大量破壊兵器や軍事利用の恐れのある製品の調達を支援している懸念が高いためとしている。ウィルバー・ロス商務長官は「この新たなELへの追加は、米国の国益を損ねる活動に米国の製品・技術の使用を未然に防ぐという取り組みを実践するもの」と述べた。ELには、政権が「米国の国家安全保障または外交政策上の利益に反する行為をした」と判断した団体や個人が掲載され、それらへ米国製品(物品・ソフトウエア・技術)を輸出・再輸出・みなし輸出する際は事前許可が必要となる。
追加された企業には、セキュリティーソフト開発の奇虎360(Qihoo 360 Technology Co. Ltd.)や、人工知能(AI)技術を手掛ける達闥科技(CloudMinds Inc.)などが含まれる。ともに北京市に本社を構える大手IT企業で、達闥科技は新型コロナウイルスの感染が拡大した湖北省武漢市に、病院内で物資・食料などを運搬するためのAI搭載ロボットを提供していた。中国外交部の趙立堅報道官はELへの追加措置に対して「内政干渉」と批判し、中国の主権と安全保障、利益のために必要な措置を講じると述べた。中国の元外交官の周小明氏は「今回の動きは(米中)デカップリング2.0または2.5」として今後も続くとの見方を示している。(ブルームバーグ5月25日付)
新疆ウイグル自治区での人権侵害を理由に別途9組織体も追加
BISは26日の別のプレスリリースで、中国公安部が所管する法科学研究所や企業など計9組織体もELに追加すると明らかにした。これら組織体は、新疆ウイグル自治区での人権抑圧活動や強制労働、先端技術による自治区の監視に関して、中国政府に加担したとされる。BISは2019年10月にも、同自治区の公安当局や民間企業などを同様の理由でELに加えている(2019年10月9日記事参照)。米下院外交委員会で少数党筆頭委員を務めるマイケル・マコール議員(共和党、テキサス州選出)は「これら(中国共産党の支配下にある)団体は少数民族の権利を侵害し、そこから利益を得ている」として、ELへの追加を支持するコメントを寄せている。BISは5月15日にEARを変更し、半導体などを対象に華為技術(ファーウェイ)とその関連企業への輸出管理を強化しているが(2020年5月19日記事参照)、今回、新疆ウイグル自治区での人権侵害を理由にELに追加された9企業・団体もその対象に含まれることになるとみられる。
(藪恭兵)
(米国、中国)
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