2019年外国貿易障壁報告書、報復関税やデジタル貿易の規制増加を問題視
(米国)
ニューヨーク発
2019年04月05日
米国通商代表部(USTR)は3月29日、米国の貿易・投資・サービスに対する障壁を国別に示した2019年版「外国貿易障壁報告書(NTE)」を公表した。
2019年版のNTEは65カ国・地域を対象にしている。内訳をみると、EU(49ページ)以外では、中国(22ページ)、インド(22ページ)、ロシア(19ページ)、インドネシア(17ページ)などに関する記述が多い。中国に関しては、技術移転を目的とした政府介入が行われているとして、1974年通商法301条に基づき2,500億ドル相当の中国製品に対して追加関税を発動したことや、これに対する中国からの報復関税措置などについて記載した(注)。また、1962年通商拡大法232条に基づく鉄鋼・アルミニウムへの関税賦課(2018年3月27日記事参照)に対して、EU、中国、カナダ、メキシコ、ロシア、トルコが対抗措置として米国製品に不当な報復関税を課しているとした。
デジタルサービス税導入の動きを警戒、包括的かつ先進的な協定としてUSMCAを強調
USTRはNTEの本文とは別に、デジタル貿易に関するファクトシートを公表し、2018年に引き続き、国境を越えたデータ移動の自由やクラウドサービスの事業展開を妨げる法律や規制の増加に警鐘を鳴らしている。国別では、中国について、サイバーセキュリティー法に基づくデータの現地化要求やクラウド・コンピューティング・サービスに関する規制などを問題視している。データの現地化要求に関しては、インドネシア、ロシア、トルコ、ナイジェリアに加え、新たにインド、サウジアラビア、ベトナムで規制が導入されたと記載している。ケニアでも同種の規制の導入が検討されているとしている。
デジタルサービス税導入の動きにも警戒感を示している。EUに関しては、EU域内に所在しない企業に対してもデジタルサービス税の導入を検討する動きに対し、特に米国企業への影響が大きいとして非難した。また、フランス、英国、イタリア、スペイン、オーストリアはそれぞれ独自にデジタルサービス税の導入を検討しているとし、警戒感を示した。インドネシアについては、2018年にソフトウエアやアプリ、映像、音楽といったデジタル配信製品の関税品目(Tariff Line)が導入され、現時点で関税は課されていないものの、将来的に障壁になり得るとの認識を示した。
デジタル貿易に対する障壁を取り除くべく、WTO加盟国とともに高水準な協定の設置に取り組むとしており、最も包括的かつ先進的なデジタル貿易規則を採用している協定として、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)を挙げ、USMCAが今後のデジタル貿易規則のひな型となることを望むと記載した。
(注)追加関税措置については、2018年7月9日記事、8月24日記事、9月25日記事参照。
(須貝智也)
(米国)
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