米政府が対中追加関税賦課を開始、中国政府も対抗
(米国、中国)
ニューヨーク発
2018年07月09日
米国政府は、1974年通商法301条(以下、301条)に基づき、7月6日午前0時1分(米国東部時間)以降に通関した中国製品を対象に、25%の追加関税の賦課を開始した(注1)。対象品目は、米通商代表部(USTR)が6月15日に公表した818品目(対中輸入額340億ドル相当)で、輸入額が大きい品目は、乗用車(HTSコード:87032301)や磁気ディスクドライブなどのストレージ(84717040)、液体ポンプ部品(84139190)、プリンター用部品(84439920)などだ(2018年6月20日記事参照)。
301条は、貿易協定の違反や米国政府が不公正と判断した他国の措置の是正を促すことを目的に、貿易制裁を行う権限をUSTRに与えている。トランプ大統領は3月23日、中国の技術移転に関する法令や慣行(注2)への対抗措置の発動を指示していた。
第2弾は2週間以内に発動と発言
トランプ大統領は7月5日、284品目(160億ドル相当)を対象にした第2弾の関税賦課についても、2週間以内に発動すると発言した(「ワシントン・ポスト」紙電子版7月5日)。第2弾の関税賦課対象品目は、USTRが6月15日に新たに公表したもので、半導体やプラスチック製品などが多く含まれている。USTRはこれらの品目については公聴会(7月24日開催)を含むパブリックコメントを7月末までに実施し、その後に最終確定するとしていたが、そのプロセスの終了を待たずに発動することを示唆したかたちだ(2018年6月21日記事参照)。
さらなる追加で5,000億ドル相当の品目への関税賦課も
またトランプ大統領は、中国政府が米国の要求を受け入れずに対抗措置を取った場合、追加でまず2,000億ドル、その後に3,000億ドルの関税賦課を行うと述べた。10%の関税を賦課する2,000億ドル相当の中国製品を特定するよう6月18日にUSTRに指示しているが、3,000億ドルについては今回初めて発動の考えを示した。
一方、中国政府は7月6日、米国への対抗措置として、米国の措置に合わせるかたちで対米輸入額340億ドル相当の品目に対して25%の関税賦課を開始した。これらの品目には、大豆などの農産品や乗用車などが含まれる。さらに中国政府は、WTOに米国を提訴した(通商専門誌「インサイドUSトレード」7月6日)。
なお、実施予定を含めた米国の関税賦課対象総額(5,500億ドル)は、2017年の対中輸入額(約5,000億ドル)を上回る。全ての措置を発動した場合には、消費財を含むほぼ全ての中国からの輸入品が対象になる見込みだ。
(注1)追加関税は、既存の税率(WTO最恵国待遇税率)に加えて、アンチダンピング(AD)や補助金相殺措置など、対象品目に現在課せられている諸税に上乗せして賦課される。
(注2)米国政府が問題視する中国の技術移転策や慣行については2018年6月14日付地域・分析レポート参照。
(鈴木敦)
(米国、中国)
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