USTR、対日通商交渉の目的を発表

(米国)

米州課

2018年12月25日

米通商代表部(USTR)は12月21日、2015年大統領貿易促進権限(TPA)法にのっとり、日本との通商交渉の目的を公表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。TPA法は通商交渉開始の30日前までに、各交渉分野について包括的で詳細な交渉目的の公開を義務付けている(注1)。

USTRが公表した交渉目的は、物品貿易、衛生植物検疫措置(SPS)、通関・貿易の円滑化・原産地規則、貿易の技術的障壁(TBT)、良い規制慣行、透明性・公表・運営、サービス貿易(通信・金融を含む)、デジタル貿易・国境を越えたデータ移動、投資、知的財産、医薬品および医療機器の手続き上の公平性、国有企業(国の統制を受けた企業も含む)、競争政策、労働、環境、腐敗対策、貿易救済措置、政府調達、中小企業、紛争解決、一般条項、為替の22項目から構成されている。北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉時に公表された目的とほぼ同じ項目が挙げられた(注2)。

公平で公正な自動車に関する貿易を行うための条項設置を検討

物品貿易では、米国の貿易収支の改善と対日貿易赤字削減などを実現することがうたわれた。その手段の1つとして、自動車については、公平でより公正な貿易を行えるよう、日本の非関税障壁への対処および米国内での生産と雇用増加を目的とする内容を含む追加条項を必要に応じて設ける、と記載された。通商交渉開始に合意した日本との共同声明で、米国は米国内の自動車生産や雇用増加を目的に市場アクセス交渉を行うとしていた(2018年9月27日記事参照)。

日本との過去の経済連携協定(EPA)での約束が上限とされていた農産品の市場アクセスについては、関税の削減や撤廃によって米国産農産品の包括的な市場アクセスを求める、との記載にとどまった。

米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)で初めて導入される為替条項については、効果的な国際収支調整や不公平な競走上の優位性の取得を防ぐため、日本が為替操作を行わないようにする、と記された。デトロイトスリーで構成される自動車政策会議(AAPC)などが、USMCA以上の強制力を有する同条項の導入を公聴会で求めていた(2018年12月12日記事参照)。

同じくUSMCAで初めて導入される非市場経済国との自由貿易協定(FTA)交渉に関する条項については、一般条項の中で、日本が非市場国とのFTA交渉をする場合、透明性を確保し適切な行動をとるためのメカニズムを規定する、と記載された。

EUとは公聴会終了、英国とは2019年1月に

USTRは、日本との通商交渉開始の意思を議会に通知した同じ日に、EUと英国についても議会通知をしている(2018年10月17日記事参照)。EUとの通商交渉に関する公聴会は12月14日に終了しており、英国については2019年1月14日に行われる予定だ。

(注1)米国憲法では、外国との通商関係は議会が管轄している。TPA法は、この通商交渉に関する権限を大統領に一時的に付与するもの。TPAが大統領に与えられている場合、議会に対する報告・相談義務など、TPA法に定められた目的や手続きにのっとって政権がまとめた通商協定法案は、議会で修正を受けずに賛否のみの採決に付すことができる。

(注2)NAFTA再交渉の交渉目的については、2017年7月20日記事7月21日記事参照。

(赤平大寿)

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