USTRが日本、EU、英国との貿易交渉開始意思を議会に通知
(米国、日本、EU、英国)
ニューヨーク発
2018年10月17日
米通商代表部(USTR)は10月16日、日本、EU、英国それぞれと貿易交渉を開始する意思を議会に通知した。「2015年大統領貿易促進権限(TPA)法」(注1)は、貿易交渉を開始する90日前までに交渉開始の意思を議会に通知することを大統領に義務付けている。議会通知が行われたことで、2019年1月14日以降であれば、米国政府は日本、EUと貿易交渉を開始することが可能になった。USTRは今後、下院歳入委員会と上院財政員会との協議を実施した後、通商交渉を開始する30日前までに、交渉目的の詳細をUSTRのウェブサイトに公開する必要がある(2019年1月14日に交渉を開始するためには、2018年12月15日までの公開が必要)。なお、英国に関しては、2019年3月29日のEUからの離脱後に交渉を開始するとしている。
日本との交渉は自動車、農業、サービスが焦点になる可能性
各議会通知書(日本、EU、英国)には、米国政府の交渉ポジションが、TPA法102条に定められた議会の交渉目的にのっとったものとなるように、議会と緊密に協議を行うとの記載がされている。USTRはまた、通商交渉の方向性や内容などに関するパブリックコメントを実施するとしており、この詳細は後日、官報で発表される。
日本との交渉に関する議会通知書には、「自動車、農業、サービスなどの重要産業の米国の輸出者が、数十年にわたり、さまざまな関税・非関税障壁に直面してきた」との記載が盛り込まれている。また、日本との交渉については、議会と協議の上で「段階的に(in stages)」行う可能性があるとしている。
貿易関連委員会のトップである共和党のケビン・ブレイディ下院歳入委員長(テキサス州)とオリン・ハッチ上院財政委員長(ユタ州)はそれぞれ、トランプ政権の議会通知を歓迎する声明を出した。一方、民主党のリチャード・ニール下院歳入委員会少数党筆頭委員(マサチューセッツ州、注2)とロン・ワイデン上院財政委員会少数党筆頭委員(オレゴン州)は、労働や環境保護など、民主党の優先事項が政権の交渉目的に反映されるよう求めた。
(注1)米国憲法では外国との通商関係は議会が管轄している。TPA法は、この通商交渉に関する権限を大統領に一時的に付与するもの。TPAが大統領に与えられている場合、議会に対する報告・相談義務など、TPA法に定められた目的や手続きにのっとって政権がまとめた通商協定法案は、議会で修正を受けずに賛否のみの採決に付すことができる。
(注2)リチャード・ニール議員の声明の内容については、通商専門誌「インサイドUSトレード」(10月16日)の記事を参照した。
(鈴木敦)
(米国、日本、EU、英国)
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