日米交渉公聴会、自動車分野で米国基準受け入れや為替条項要求

(米国、日本)

ニューヨーク発

2018年12月12日

米国通商代表部(USTR)は12月10日、日本との通商交渉に向けた公聴会を開催した。

米系自動車団体からは、日本は非関税障壁により国内の自動車産業を長年にわたり保護し、外国メーカーに不利な競争を強いていると批判の声が上がった。デトロイトスリーで構成される自動車政策会議(AAPC)のマット・ブラント会長は、日本の複雑な安全基準や環境基準への対応には膨大なコストがかかるとし、「日本が米国の自動車安全基準(FMVSS)と環境保護基準を受け入れることが、非関税障壁を取り除く上で最も効果的な手段」と述べ、認証基準の変更を要求した。また、「日本は歴史的に為替介入を行っているため、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)より、強固で執行力のある為替条項を設けるべき」と発言した。

米国自動車部品工業会(MEMA)のアン・ウィルソン上級副代表(政府渉外担当)は、両国が平等な立場で交渉を進めるためにも「1962年通商拡大法232条に基づく鉄鋼・アルミニウム製品への追加関税措置をまず解決すべき」とし、また、日本からの自動車および同部品輸入に、上限や輸入割当を設けて制限すべきでないとの認識を示した。

他方で、全米自動車労働組合(UAW)のデザレイ・ホフマン国際代表は、米国の対日自動車貿易赤字が大きいことに触れ、「日本の米国産自動車および同部品輸入割合に連動した輸出割当を、日本に対し設定すべき」と主張した。また、「日本が非関税障壁を撤廃して市場開放が果たされるまで、米国のいかなる関税も引き下げるべきではない」と述べた。

そのほか、複数の団体から、自動運転をはじめとする新技術に関して世界基準に調和した規則を設けることや、自由なデータ流通を交渉内容に含めることが提案された。

農畜産団体は輸出競争力の低下を懸念

農畜産団体からは、日EU経済連携協定(EPA)、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)の発効により、競争相手国の対日輸出関税が引き下げられ、相対的に米国の対日輸出が不利になる、との危機感が表明された。また、対日輸出に係る日本側の関税に関して、日EU・EPAおよびCPTPPで合意された水準、またはそれ以上の内容で、速やかに日本との貿易協定を結ぶべき、との声が相次いだ。米国食肉輸出連合会(USMEF)のダン・ホルストロム会長は「日本は米国産牛肉と豚肉の最大輸出相手国だが、CPTPPと日EU・EPAが発効される一方で、日米間が合意できなければ、日本向け輸出は大きく減少する」との認識を示し、米国経済や雇用にも悪影響が出るとの試算を紹介した。

そのほかでは、通信業界は自由な越境データ移転やソフトウエアのソースコードの開示要求禁止、デジタル製品に対する関税賦課の禁止、などを交渉内容に含めるよう求めた。

(須貝智也)

(米国、日本)

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