カナダ中銀、政策金利を4.5%に据え置き

(カナダ)

トロント発

2023年03月09日

カナダ中央銀行は3月8日、政策金利を4.5%に据え置くと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。2022年3月から2023年1月までの10カ月間、中銀政策決定機関の運営評議会において8会合連続で4.25ポイント引き上げられた利上げに、いったん終止符が打たれた。

中銀は今後の政策金利について、前回1月の発表(2023年1月26日記事参照)で「経済情勢が金融政策報告書の見通しにほぼ沿って推移することを条件に、現在の水準を維持する」と表明しており、最新のデータ評価に基づいて今回の据え置きを決めたと明らかにした。ただし、1月に続いて「インフレ率を目標の2%に戻すために必要であれば、政策金利をさらに引き上げる用意がある」とも述べ、今後の状況に応じて再利上げも選択肢にあるとの姿勢を示した。

中銀はカナダ経済の現状について、2022年第4四半期の経済成長率(実質GDP成長率)は消費、政府支出、純輸出がいずれも増加する一方、在庫投資が大きく減速したことから前期比年率0.0%の横ばいとなり(2022年3月2日記事参照)、中銀の予測を下回ったとした。金融引き締め政策が引き続き家計支出の重荷となっており、内外の需要の鈍化に伴って企業投資も弱まっているという。ただし、雇用の伸びは大きく、失業率は歴史的な低水準で、求人倍率や賃金は上昇していることについても言及した。

さらに、中銀は2023年1月の消費者物価指数(CPI)上昇率は、エネルギー、耐久消費財および一部のサービスの価格上昇の減速を反映して、前年同月比5.9%に鈍化した(2023年2月22日記事参照)ものの、食料品や住居費の上昇は依然として大きく、引き続き家計を圧迫しているとした。今後2〜3四半期の見通しとして、経済成長の鈍化に伴い製品市場や労働市場の圧力が緩和されること、その結果、賃金上昇が緩やかになり、競争圧力が高まることから企業がコスト上昇を消費者へ転嫁することが難しくなると予想した。さらに、最新のデータは、CPI上昇率が2023年の半ばには3%程度まで低下するという中銀の予想に沿ったものだとした。

ただ、中銀の見通しとは異なる見解を示すエコノミストもいる。発表を受け、TD銀行のディレクター兼シニアエコノミストのジェームス・オーランド氏は「利上げは、金利に敏感な経済分野に大きな打撃を与え、不動産市場はまだ底打ちの途中段階にある。問題はこれが広範に及んでいないことだ。雇用市場は大幅に拡大し、雇用主は猛烈なペースで雇用している。並行して、政府から家計への給付金が大幅に増加し、家計を消費に走らせている。これは、中銀が経済減速を意図しているのとは逆に経済に活力を与えている。この勢いが続けば、インフレ率が再び上昇し、中銀は今後数カ月のうちに再度利上げに踏み切らざるを得なくなるかもしれない」とコメントした(TDエコノミクス3月8日)。

中銀の次回政策金利の発表は4月12日に予定されている。

(飯田洋子)

(カナダ)

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