バイデン米大統領、ロシアからのエネルギー禁輸措置を決定

(米国、ロシア、ウクライナ、カナダ、英国、EU)

ニューヨーク発

2022年03月09日

米国のジョー・バイデン大統領は3月8日、ロシアから原油などのエネルギーの輸入を全面的に禁止する大統領令に署名外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、即日発効した。ロシアからの原油禁輸措置をめぐっては、国民の間で支持が広がっているだけでなく(2022年3月8日記事参照)、議会でも同措置の法案採決が模索されており(2022年3月7日記事参照)、高インフレを加速させるものの、こうした動きに押されて実施に踏み切ったかたちだ。

今回の措置では、ロシアからの原油、天然ガス、石炭、石油・石炭関連製品などに関して、新規輸入および既に契約している分については45日間の猶予期間を設けた上で、全面的な禁輸措置を講じる。加えて、米国人によるロシアのエネルギー部門への新規投資については、既存の契約に基づくものも含めて禁止となる。ロシアにおけるエネルギー投資については、石油メジャーの英国シェルが同日に完全撤退を発表するなど、民間でも自発的なロシアからの事業撤退が広がっている。

米国の本措置と同内容の措置をとる国は今のところないが、バイデン大統領は「同盟国と緊密に協議して」決定したと述べており、カナダは2月にロシア産原油の輸入禁止を発表し、英国も同日にロシア産原油および石油製品の輸入を年末までに段階的に禁止する方針を発表している。また、ロシア産エネルギーの輸入割合が相対的に大きいEUも同日、年末までにロシア産天然ガスの輸入量を3分の2削減する計画を発表した。

バイデン大統領は「国内でコストが生じないわけではない」と述べ、負担が生じることを認めつつ、「プーチンによるコスト上昇を最小限に抑えるためにできる限りのことをする」としている。3月8日時点で、WTI原油先物価格は125ドル付近、米国内の平均ガソリン価格は1ガロン(約3.8リットル)当たり4.17ドルとなっており、14年ぶりの高水準に達している。米国において、ロシア産原油は消費量の約3.4%にすぎず他国に比べて低いが(2022年3月2日記事参照)、今回の禁輸措置は需給を悪化させ、さらに価格を上昇させ得る。ジェン・サキ報道官は3月7日の定例会見で、2019年以来、経済制裁を理由に原油の輸入を停止しているベネズエラ(2019年2月5日記事参照)と「(エネルギー問題について)協議している」ことを明らかにし、サウジアラビアやイランともエネルギーを含むさまざまな問題を話し合っていると述べた。バイデン政権は、これまで関係が悪化していた国を含めて、ロシア産原油に代わる代替調達先を模索している。また、バイデン大統領は「われわれは国内のエネルギー生産を制限していない」と述べ、既に掘削許可を取得している連邦政府所有地での石油生産を拡大し、エネルギー価格を抑制するよう石油・ガス業界に訴えた。

(宮野慶太)

(米国、ロシア、ウクライナ、カナダ、英国、EU)

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