米上院、ロシアからのエネルギー輸入禁止する法案を超党派で提出

(米国、ロシア、ウクライナ)

ニューヨーク発

2022年03月07日

米国連邦議会上院の民主党ジョー・マンチン議員(ウェストバージニア州)や共和党リーサ・マーカウスキー議員(アラスカ州)ら18人の超党派議員は3月3日、ロシアからの原油などのエネルギー輸入を全面的に禁止する法案を提出外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

同法案では、ロシアによるウクライナ侵略による安全保障や外交政策、経済に対する脅威に関する国家非常事態を宣言し、ジョー・バイデン大統領に対し、ロシアからの原油や天然ガス、石炭などのエネルギー輸入を全面的に禁止するよう指示している。共和党は、ロシアのウクライナ侵攻中は同国産原油に対する支払いを停止するよう求めており、ナンシー・ペロシ下院議長を含む下院民主党もこれに同調している(ブルームバーグ3月3日)。こうした動きを踏まえて、上院のエネルギー・天然資源委員会に所属するマンチン議員やマーカウスキー議員らを中心に、超党派で法案が提出されたかたちだ。

バイデン大統領はロシアからの原油輸入差し止めについて問われた際に「全ての選択肢がテーブルにある」と述べた(ロイター3月2日)。一方で、高インフレへの対応に苦慮している現在、ガソリン価格高騰につながる対応は避けたい事情もある。ジェン・サキ報道官は3日の定例会見で「(ロシアからの禁輸措置を講じれば)米国や世界中でガソリン価格が上昇する」「大統領にとってそれは明らかに大きな判断材料だ」と述べ、法案についての支持を示していなかった。そうした中で、アントニー・ブリンケン国務長官は6日、米テレビ局CNNのインタビュー外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで「ロシアの石油について、大統領や他の閣僚と昨日、まさにこのテーマについて電話で話した。現在、欧州のパートナーや同盟国と、ロシアの石油の輸入を禁止する一方で、世界市場に石油を適切に供給できるようにするという見通しについて、協調して検討するように協議している」と答えた。

米国がロシアから輸入する原油は2021年平均で1日67万バレルと、米国の消費量の約3.4%にすぎないが、これはロシアの原油輸出量の約13%に相当し、大きな打撃となり得る。共和党のロブ・ポートマン上院議員(オハイオ州)は、バイデン政権が建設許可を取り消したカナダと米国を結ぶキーストーンXL原油パイプラインを挙げて「われわれは北米からのエネルギー供給を遮断している一方で、ロシアの原油を購入することでロシアを助けている」とその対応を批判し、国内のエネルギー資源の活用を求めている(abcニュース3月2日)。

米国は3月1日に国際エネルギー機関(IEA)加盟国と協調して石油戦略備蓄を6,000万バレル市場に放出することを決定し(2022年3月1日記事参照)、ロシアからの原油供給停滞への備えを固めている。しかし、ガソリン価格高騰につながる行為は少しでも避けたいという思惑や、バイデン政権が中長期的に推し進める気候変動対策との矛盾も複雑に絡み、バイデン政権と議会で微妙な綱引きが続いている。

(宮野慶太)

(米国、ロシア、ウクライナ)

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