バイデン米政権、IEA加盟国と石油戦略備蓄を放出、6,000万バレルのうち半分を米国が負担、一般教書演説で言及

(米国、ウクライナ、ロシア)

ニューヨーク発

2022年03月02日

国際エネルギー機関(IEA)は3月1日、加盟各国が協調してそれぞれの石油戦略備蓄を市場に6,000万バレル放出することを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、これに合わせて米国エネルギー省は同日、6,000万バレルのうち、米国が半分の3,000万バレルを負担することを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。緊迫するウクライナ情勢を受けて、ロシアからの原油供給が滞るのではとの不安から原油価格は高騰を続けている。WTI原油先物価格は3月1日に約109ドルとなり、ここ1週間で約20%上昇している。

バイデン政権下での石油戦略備蓄の放出は、2021年11月の5,000万バレル(2021年11月24日記事参照)に続いて2回目。IEAの総放出6,000万バレルは1日の世界原油需要量の約6割、米国分の3,000万バレルは米国内原油需要の約2日分にすぎないとされるが、IEAは状況に応じて各国の石油戦略備蓄のさらなる放出も示唆している。

6,000万バレルは約30日間をかけて市場に放出される予定。IEAによると、ロシアの原油の1日輸出量は500万バレルで、世界の原油貿易量の12%に相当するとしており、石油戦略備蓄の段階的な市場放出によって、一部停滞すると思われるこのロシア輸出分を補うことで価格安定を見込む。

米国のレギュラーガソリンの全国平均価格は3月1日時点で1ガロン(約3.8リットル)3.619ドルで、1年前と比べて約3割上昇している。長引く価格の高止まりと、ウクライナ情勢の緊迫などから、与野党でガソリン価格引き下げの方策が議論されており、一部では連邦ガソリン税の一時停止も検討されているとされる。しかし、ガソリン価格に占める連邦ガソリン税は1ガロン約18セントにすぎず、足元で先物価格が高騰していることから、今後さらにガソリン価格上昇が見込まれる中で、その効果は限定的との見方が大半だ。加えて、こうした政策はバイデン政権が推し進める電気自動車(EV)推進などの気候変動対策と矛盾することになるが、ジョー・バイデン大統領は3月1日に行われた一般教書演説外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、「(今回の一連の石油戦略備蓄の市場放出は)国内のガソリン価格の抑制に寄与する」と述べ、その必要性を強調しており、当面は足元のガソリン価格高騰への対処を優先していくもようだ。

(宮野慶太)

(米国、ウクライナ、ロシア)

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