バイデン米政権、石油戦略備蓄を5,000万バレル放出へ、日本政府も一部放出決定
(米国、日本、中国、インド、韓国、英国)
ニューヨーク発
2021年11月24日
バイデン米国政権は11月23日、米国が保有している石油戦略備蓄(SPR)から最大5,000万バレルを市場に放出することを発表した。米国ではガソリンを中心にエネルギー価格の高騰が問題となっており、大統領自ら連邦取引委員会にガソリン市場の監視を依頼するといった対策を行ってきたが、より速効性のあるSPR放出を求める声が議会などから高まっていた(2021年11月19日記事参照)。
エネルギー省によると、5,000万バレルは米国が保有するSPR総量の約8%、国内の原油需要の3日分弱に相当する量とされる。放出する5,000万バレルのうち3,200万バレルは、テキサスとロサンゼルスにあるそれぞれ2つの備蓄拠点から石油会社に貸与するかたちで、12月中旬から数カ月かけて放出するとしている。残りの1,800万バレルは12月17日に販売通知を行い、市場に放出していくとしている。
今回は米国だけでなく、日本、中国、インド、韓国、英国も協調し、各国保有のSPRから市場放出するとしている。岸田文雄首相は24日、記者団に対し「米国とはこれまでも国際石油市場の安定のために連携を取ってきたが、わが国としても米国と歩調を合わせ、現行の石油備蓄法に反しないかたちで、国家備蓄石油の一部を売却することを決定した」と述べた。
今回の取り組みについて、米国のエコノミストからは「(原油)価格を大幅に引き下げるほどの規模ではなく、OPECプラスの増産ペースを減退するきっかけとなれば、逆効果にもなり得る」と指摘する声があった(ロイター11月23日)。また、WTIの原油先物価格(オクラホマ州クッシング)は11月にかけて85ドル付近まで上昇したが、足元では80ドル付近まで下がってきていることから、価格は既にピークアウトしていると指摘する声もある。原油の供給元であるOPECプラスはこうした現状を踏まえ、米国を含む各国からのこれまでの増産要請に対して、需要が底堅いとは言えないことを理由に、追加増産を見送っている。
バイデン政権は引き続きOPECプラスに増産要請を行っているとしており、12月2日に開催されるOPECプラスの次回閣僚会合での主要産油国の対応や、今回のSPR放出と関連した関係各国の動きが原油価格に今後どのように作用していくのか注目される。
(宮野慶太)
(米国、日本、中国、インド、韓国、英国)
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