バイデン米政権、予算教書を議会に提出、2022年度は6兆ドル規模の歳出を要求

(米国)

ニューヨーク発

2021年06月03日

米国行政管理予算局(OMB)は5月28日、支出規模6兆110億ドルとする2022年度(2021年10月~2022年9月)予算案を含む予算教書を議会に提出PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。年度ごとに議会による歳出予算法の制定が必要な裁量的経費については先行して議会に提出されていたが(2021年4月13日記事参照)、今回は残りの義務的経費や「米国雇用計画」(2021年4月5日記事2021年5月25日記事参照)、「米国家族計画」(2021年4月30日記事参照)など、2022年度中に見込まれる支出額が盛り込まれている。新型コロナウイルス対策で支出規模が拡大した2020年度や2021年度に比べれば予算規模は減少しているが、新型コロナウイルス感染拡大前の2019年度の支出額4兆4,480億ドルと比べると、約35%の増加となる。

同予算教書の具体的な内容としては、米国雇用計画に盛り込まれたインフラ投資、サプライチェーンの強化、住宅・商業ビルの耐候化関連の支出、米国家族計画に盛り込まれた無償教育拡充や低所得者・子育て世帯への税額控除拡充などの支出が含まれている。結果として、これら支出を含む2022年度の義務的経費は4兆180億ドル(前年度比23.5%減)、裁量的経費は4月に提出された1兆5,224億ドルから積み増しされて1兆6,880億ドル(前年度比0.5%減)となっている。

今回の予算教書に合わせて財務省が同日公表した2022年度の歳入案に関する一般説明、通称「グリーンブック外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」によると、歳出の財源としては、米国雇用計画や米国家族計画で提案されている法人税率引き上げ(21%から28%)や所得税の最高税率引き上げ(37%から39.6%)などにより、2022年度は1,850億ドルの増収、2031年度までの10年間で3兆6,074億ドルの増収を見込んでいるという。財政赤字は、2022年度は1兆8,370億ドルを見込み、2023年度以降も1兆ドルを超える財政赤字が続くが、OMBは2030年代には縮小に転じると説明している。総債務(Gross Federal debt)のGDP比は、2022年度に138.1%に拡大し、財政赤字と連動して2020年代半ばにピークの140%に達した後、2031年度には130%台半ばまで徐々に減少することが見込まれている(詳細は添付資料参照)。

今回の予算教書提出に先立って、議会野党の共和党は米国雇用計画への対案として、当初の5,680億ドルから9,280億ドル規模に拡大したインフラ投資計画をバイデン政権に示しているが、財源としては法人税率などの引き上げではなく、新型コロナウイルス対策の費用を流用するとしている。バイデン政権との協議を主導している、共和党のシェリー・ムーア・カピト上院議員(ウェストバージニア州)は「私たちは交渉中で、楽観的な見通しを持っているが、(バイデン政権の支出規模とは)まだ大きな開きがある」と述べている(CNBC5月27日)。今回の予算教書は、既存の米国雇用計画を前提にしていることから、共和党からの反発が容易に予想される。

バイデン政権は、共和党からの新たな提案に対して、ジェン・サキ大統領報道官名で5月27日に声明を出し、新型コロナウイルス対策予算の流用は、中小企業や病院などが新型コロナの影響から回復するに当たって妨げになる恐れがあると指摘し、「他の提案が出てくることを期待して引き続き検討を続けている」「(雇用計画に必要となる)雇用関連の法案をどう進めるか明確な方向性を示せるよう、議会が再開する6月7日の週に上下院の議員と積極的に協力していく」としている。米国では税制や財政については議会が立法化するため、今回の予算教書は議論のたたき台という位置付けとなるが、今後はバイデン政権が野党・共和党を含め、議会とどのように調整を進めるのか注目される。

(宮野慶太)

(米国)

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