EU、米国ボーイング補助金に対する追加関税措置を決定

(EU)

ブリュッセル発

2020年11月10日

EU理事会(閣僚理事会)は11月9日、オンライン形式で開催され、米国による航空大手ボーイングへの補助金に関する報復措置として、特定の米国製品に対する追加関税の賦課を決定した。WTO仲裁廷は10月13日に、EUに対して年間約40億ドルの対米国報復措置を認める仲裁判断を出しており(2020年10月15日記事参照)、これを受けてEUは対米追加関税の実施準備に着手していた(2020年10月15日記事参照)。今回の決定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、米国製の航空機に15%のほか、チーズなどの農産品からトラクターなどの工業製品まで幅広い品目に対して25%の追加関税が賦課されることになる(注)。今回の追加関税措置は11月10日から適用される。

交渉による解決に向け、米国との協議継続を強調

EU理事会後に、議長国を務めるドイツのペーター・アルトマイヤー経済・エネルギー相と欧州委員会のバルディス・ドムブロフスキス上級副委員長(通商担当)は、記者会見を開き、ドムブロフスキス上級副委員長は、EUとしては交渉による解決を望む、という従来の立場をあらためて表明した。また、今回の決定は、米国との報復合戦をエスカレートさせることを意図するものではなく、あくまでも米国の追加関税措置と同様の措置をとるにすぎない点を強調。加盟国で製造された航空機やチーズなどのEU産品に対して、米国が現在課している追加関税(2020年2月17日記事参照)を撤回するのであれば、EUも今回の対米追加関税を即時に撤回する用意があるとし、今後も米国との協議を続けていく、とした。米国の大統領選挙の結果を受け、EUは米国と協力強化を目指すとするなど(2020年11月9日記事参照)、EUの追加関税の実施時期にも注目が集まっていたが、アルトマイヤー経済・エネルギー相は、米国による追加関税は既に1年以上にわたり実施されており、2021年の米国の新政権の発足まで待つことはできないとした。

(注)EUの追加関税の対象の詳細は、今回の決定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(欧州委員会実施規則2020/1646のAnnex IとAnnex II)を参照のこと。

(吉沼啓介)

(EU)

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