欧州委、対米対抗措置へのWTO判断受け、交渉による解決をあらためて強調
(EU、米国)
ブリュッセル発
2020年10月15日
WTOの仲裁廷は10月13日、米国による航空機大手ボーイングに対する補助金に関してEUが米国を提訴していた案件で、EUに認められる対米国の報復措置の範囲を年間約40億ドルとする仲裁判断を発表した(2020年10月15日記事参照)。これを受け、欧州委員会は同日、米国との関税合戦ではなく、交渉による解決を望むとの立場をあらためて強調した。
交渉による解決望むも、報復関税の実施準備にも着手
10月から正式に通商担当となった欧州委のバルディス・ドムブロフスキス上級副委員長は仲裁判断の発表後、同日付のツイッターで「EUは交渉による解決を強く望む」とし、米国との交渉を直ちに再開すると投稿した。続けて「新型コロナウイルスの感染拡大による景気後退からの復興を目指す中、追加関税はどちらの側にとっても経済的な利益にならない」と強調し、2019年10月から米国がEUに課している追加関税を速やかに撤回するよう求める声明を発表した。米国との関税合戦を避けたいEU側はこれまでも、WTOが協定違反と認定したEU加盟国によるエアバスへの補助金の問題で、協定違反を是正したとの立場を発表するなどし(2020年7月30日記事参照)、米国によるEUへの報復関税の早期撤回を求めていた。ただし、交渉による早期解決が見込めない場合は、報復措置をとる用意があるとし、2019年4月に発表したEUによる対米国の追加関税措置の対象候補となる暫定品目リスト(2019年4月18日記事参照)を今後確定させる予定だとした。
また、欧州議会国際貿易委員会(INTA)のベルント・ランゲ委員長(ドイツ選出)も10月13日付ツイッターで、今回の仲裁判断を受け、これが米国との交渉による解決へのインセンティブになることを望むと投稿。一方で、EUは自らの利益を守るために、新たな関税を課す用意ができているとし、欧州委の立場を支持した。
(吉沼啓介)
(EU、米国)
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