WTO、米国に対するEUの対抗措置の規模を年間約40億ドルと判断
(世界、EU、米国)
国際経済課
2020年10月15日
WTOの仲裁廷は10月13日、米国に対するEUの対抗措置の規模を年間39億9,321万ドルとする仲裁判断を配布した。EUは2019年6月、米国による航空機大手ボーイングへの補助金に関する紛争(DS353)で、米国に対する対抗措置の承認申請を行っていた。今回の仲裁結果はEUの承認申請を受けて、対抗措置の内容と規模を示したものだ。
仲裁で認められた対抗措置の具体的な内容としては、米国産品に対する追加関税措置のほか、サービスの自由化約束の停止などが含まれている。
WTO協定によると、この対抗措置の発動は、EUの申請が紛争解決機関(DSB)により正式に承認されてからになる(注1)。また、対抗措置は一時的なもので、問題となる補助金措置が是正されるか、相互に満足すべき解決が得られるまでの間のみに適用される(注2)。
EUは2005年6月、米国連邦政府や州・地方政府によるボーイングに対するさまざまな租税優遇や支援措置がWTOの補助金協定などに違反するとして、WTOの紛争解決手続きを開始した。2012年3月には、WTOの最終審に当たる上級委員会がEUの主張を認め、問題となった措置の是正を米国に勧告していた。しかし、EUは米国が勧告を十分に履行していないことを理由に、今回の対抗措置の承認を申請していた。
今回の仲裁判断を受けて、米国通商代表部(USTR)は声明を発表し、「仲裁判断の根拠となった米国の補助金措置は既に撤回されており、EUには対抗措置を取る正当な根拠がない」としている。その一方で、EUと紛争解決に向けて、交渉を継続することも表明している。
大型航空機に対する補助金をめぐっては、米国もEUの航空機大手エアバスに対する各種措置が補助金協定に違反するとし、2004年10月に紛争解決手続きを開始していた(DS316)。米国が提訴した案件では、上級委員会が2011年5月にEUの補助金協定違反を認定し、問題となった措置の是正を勧告した。しかし、米国はEUが勧告を十分に履行していないことを理由に、2018年7月に対抗措置の承認申請を行い、2019年10月にその規模を年間74億9,662万ドルとする仲裁判断が示された(2019年10月3日記事参照)。米国はその後、この金額の範囲内でEU産品に対して追加関税の賦課を行っている(2019年10月16日記事、2020年2月17日記事、2020年8月14日記事参照)。
(注1)紛争解決に係る規則および手続きに関する了解(DSU)22条6項
(注2)DSU22条8項
(山田広樹)
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