米USTR、EUのエアバス補助金への報復関税対象を変更、一部食品の追加など
(米国、EU、フランス、ドイツ、スペイン、英国)
ニューヨーク発
2020年08月14日
米国通商代表部(USTR)は8月12日、EUによる航空大手エアバスへの補助金に対する報復措置として賦課している追加関税について、対象リストの変更を発表した。USTRは今回の変更を微修正と位置付けており、一部食品の品目追加や対象国の変更を行う。変更は米国東部時間9月1日から有効となる。
USTRは1974年通商法に基づき、発動済みの報復関税について、その対象リストを定期的に見直すことが義務付けられている(注1)。今回の見直しの結果、ドイツとフランスから輸入されるジャム7品目を追加関税の対象に追加した。また、チーズ(牛乳由来を除く)について対象国からギリシャを除外したほか、スイートビスケットでは、英国を除外した(注2)。それ以外の変更はなく、大型民間航空機は15%、ワインやチーズなど食品・飲料は25%の追加関税をそれぞれ維持する。
USTRは2020年6~7月に、エアバスに補助金を供与する国からの輸入品30品目(対米輸入額31億ドル相当)を対象に追加関税の拡大に向けたパブコメを募集し(2020年6月26日記事参照)、約2万4,000件のコメントが提出された。今回の発表に先立ち、超党派の上院議員13人は食品・飲料に対する追加関税を除外するよう求める書簡をUSTRに送付し、また、英国のエリザベス・トラス国際貿易相もスコッチウイスキーなどの英国産品への追加関税を即時撤廃するようロバート・ライトハイザーUSTR代表に直接要請したが、実質的に品目の除外は行われなかった。米蒸留酒協会によると、米国のスコッチウイスキー輸入額は追加関税発動後の8カ月(2019年10月~2020年5月)で前年同期比33%減少している。
ライトハイザー代表は、EU側がWTOの裁定に従う上で必要な措置を講じていないと批判する一方、「米航空業界や労働者を傷つけた措置を救済し、米企業の競争条件を是正するために、合意に向けてEUとの新たな手続きを開始する」と表明している。欧州委員会は、フランスとスペイン両政府によるエアバスへの支援内容の修正を通じて、WTO協定違反は解消されたとの見解を示している(2020年7月30日記事参照)。他方、USTRは上記修正について、WTO勧告を実施しているとは言えないと評価し、補助金の完全な撤廃が必要と述べている。
(注1)1974年通商法(301条)は、貿易協定違反や米国政府が不公正と判断した他国の措置について、貿易協定上の特恵措置の停止や輸入制限措置などの制裁を行う権限をUSTRに与えている。同法306条には、USTRは報復措置の発動後120日以内に報復リストの見直しを行い、その後180日ごとに見直しを行うことを定めている。
(注2)具体的な対象品目は、USTRの官報のAnnex2で関税分類(HTSコード)を含め確認することができる。
(藪恭兵)
(米国、EU、フランス、ドイツ、スペイン、英国)
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