米USTR、EUのエアバス補助金への報復関税の拡大を検討、31億ドル相当の品目を追加
(米国、EU、フランス、ドイツ、スペイン、英国)
ニューヨーク発
2020年06月26日
米国通商代表部(USTR)は6月25日、EUによる航空大手エアバスへの補助金に対する報復措置として賦課している追加関税について、対象品目や税率の見直しを行うと発表した。これまでに検討された品目群のほか、31億ドル相当の品目を追加し、最大100%の追加関税賦課も視野に、産業界からの意見を募る。正式には6月26日の官報で公示する。
USTRは、EUの上記補助金に対し、1972年通商法301条(注1)に基づく報復措置として、EU加盟国および英国からの輸入に対する追加関税の検討を行ってきた。米国はこれまで、2019年10月にWTOから75億ドル相当の報復措置を認められた結果、大型民間航空機に10%、ワイン、チーズなどのEU産品に25%の追加関税を課し(2019年10月16日記事参照)、また2020年3月からは同航空機に対する税率を15%に引き上げている(2020年2月17日記事参照)。
今回の見直しは、2019年4月以降に検討していた品目群に加え、新たに追加された30品目(注2)が追加関税賦課の検討対象となる。追加品目には、オリーブやチョコレートなどの農産品・加工食品や酒類(ビール、ジン、ウオッカ)のほか、フォークリフトや工作機械向けの工具などの工業品が含まれる。USTRは、これらの品目について、航空機補助金の主な拠出国とされるフランス、ドイツ、スペイン、英国に対して、100%の税率を上限に追加関税を検討するとしている。USTRによると、追加品目の対米輸入額(2018年)は31億ドルに上る。
USTRは、追加関税の対象品目拡大と税率引き上げに関するパブリックコメントをUSTRのポータルサイトで6月26日から1カ月間受け付ける。なお、現在追加関税の対象となっている品目については、税率の引き上げに加えて、追加関税からの除外要望を含めて、コメントを募集する。USTRは、追加関税がEU側によるWTOルール不整合となる(補助金)措置の撤廃や米EU間紛争の相互的に満足な解決につながるか、逆に米国の中小企業や消費者などの経済損失にならないかなどのコメントを重点的に求めている。
(注1)通商法301条は、貿易協定違反や米国政府が不公正と判断した他国の措置について、貿易協定上の特恵措置の停止や輸入制限措置などの制裁を行う権限をUSTRに与えている。
(注2)USTRは7月1日付の官報で、さらに2品目(ジャム類)をリストに追加すると発表したため、追加関税賦課の検討対象は計32品目となる。
(藪恭兵)
(米国、EU、フランス、ドイツ、スペイン、英国)
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