欧州理事会、EU離脱問題で英国側の譲歩の必要性強調
(EU、英国)
ブリュッセル発
2020年10月19日
欧州理事会(EU首脳会議)は10月15、16日の会合で、英国との将来関係交渉や気候変動問題、新型コロナウイルス対策、EU・アフリカ関係などを協議した。
新たな進展ないまま交渉継続の意向は示す
欧州理事会のシャルル・ミシェル常任議長は理事会後の記者会見で、英国との合意に向けた姿勢を示す一方で、「いかなる代償を払ってでも」というわけではないと強調。対立点となっている「公平な競争条件」や「漁業」「紛争解決などのガバナンス」(2020年7月7日記事、2020年7月27日記事参照)で進展が見られないとした。ミシェル常任議長は「公平な競争条件」の重要性を強調する一方で、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は「EUの漁業関係者が英国のEU離脱の犠牲になるべきではない」と主張するなど、どちらの論点でもEU側の譲歩が難しい様相だ。
9月に英国のボリス・ジョンソン首相が今回の欧州理事会を交渉の期限としていたことから(2020年9月8日記事参照)、欧州理事会の出方が注目されていたが、欧州理事会は声明で、欧州委のEU英国将来関係タスクフォースのミシェル・バルニエ代表に英国との交渉を継続するよう求めた。バルニエ代表は記者会見で、英国との「集中的な」協議を続けると述べたが、今回の声明では、欧州理事会が従来示してきた「集中的な」協議という文言はなく、合意の達成には英国が行動を取る必要があるとし、英国側の譲歩の必要性を強調した。
また、EU全加盟国や関係者に対し、合意が締結されないまま、英国のEU離脱移行期間が終了する事態に備えるよう求めた。さらに、EU離脱協定(北アイルランド議定書を含む)に違反するとされる英国国内市場法案(2020年9月11日記事参照)に関しては、あらためて英国にEU離脱協定の完全な順守を求めた。
2030年中間目標の採択は12月の見込み
気候変動対策に関しては、欧州理事会は現在、2050年までの気候中立(温室効果ガスの排出実質ゼロ)の達成に向け、中間目標となる2030年の数値目標の採択を目指している。欧州委員会は2030年目標として55%削減を提案(2020年9月18日記事参照)しており、西欧や北欧を中心に11の加盟国が既に賛同を表明している。今回の声明によると、加盟国ごとでなくEU全体での数値目標であることを確認するなど、化石燃料への依存が高い一部の加盟国への配慮を見せているが、今回は合意には至らず、12月の欧州理事会での採択を目指すとした。
(吉沼啓介)
(EU、英国)
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