欧州委、2030年の温室効果ガス55%削減を提案
(EU)
ブリュッセル発
2020年09月18日
欧州委員会は9月17日、2030年の温室効果ガス排出削減目標(1990年比)を「少なくとも55%」とする提案を公表した。16日のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長の一般教書演説(2020年9月17日記事参照)を受けて、3月に欧州委が提案した「欧州気候法」規則案の修正を提案するとともに、55%削減目標の詳細を説明した政策文書を取りまとめた。「欧州気候法」規則案に対しては、欧州議会の常任委員会が60%を目標とする修正案をまとめている(2020年9月14日記事参照)が、欧州委として具体的な対案を示したかたちとなった。
再生可能エネルギーのシェア、2030年に38%超を目標に
欧州委は「少なくとも55%」の削減目標は、2050年の気候中立という欧州グリーン・ディールの目玉政策を実現する上で、詳細な影響評価の結果、導き出された「バランスの取れた、現実的で節度ある」ターゲットだ、と説明した。
EUにおける再生可能エネルギーのシェアは、2018年時点で18%(EU統計局)だが、欧州委の影響評価によれば、55%目標達成には、同シェアを2030年に38~40%に引き上げる必要がある。現在進行中の投資計画や政策に基づく試算では、同シェアは2030年に33%台に達する見込みだが、目標達成にはさらに5ポイント超の引き上げが不可欠となる。
再エネ比率の引き上げや省エネ実現のために欧州委は、2021~2030年の間に、2011~2020年の10年間との対比で約3,500億ユーロ上乗せした投資が必要となると試算。必要な投資の誘導には、復興基金「次世代のEU」と次期中期予算計画からなる復興パッケージ(2020年7月21日記事参照)が柱としたが、追加の政策として「EU再生可能エネルギー・ファイナンス・メカニズム」を2021年初に立ち上げると発表した。欧州委は、同メカニズムを通じて投資家と投資プロジェクトを仲介し、公的資金と民間資金を効果的に併用すべく調整を行う。
また欧州委は、EU排出権取引制度や、乗用車および小型商用車(バン)の二酸化炭素(CO2)排出標準規則、再生可能エネルギー指令などを含む、既存の法令や諸政策の内容を「少なくとも55%」削減の目標に合致させるための修正案を2021年6月までに提示するとした。
(安田啓)
(EU)
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