EU・英の将来関係協議第5ラウンド、一部論点で進展するも状況は厳しく
(EU、英国)
ブリュッセル発
2020年07月27日
EUと英国の将来関係協議の第5ラウンドが7月20~23日にロンドンで開催され、欧州委員会のミシェル・バルニエ首席交渉官は23日に声明を発表した。幾つかの分野での前進を認めたものの、「過去数週間、英国はEUの基本原則と利益を尊重した解決策を探すという観点において、われわれと同等の取り組み(engagement)と準備(readiness)を示していない」と不満を表明した。7月中に交渉妥結につながる着地点を見いだすという、6月15日に首脳間で設定した目標(2020年6月16日記事参照)の達成は難しい状況となった。
公平な競争条件と漁業で交渉難航
同首席交渉官は、(1)社会保障制度における調整、(2)包括的で単一の制度的枠組みと効果的な紛争解決メカニズム、(3)司法・警察協力の3分野で一定の進展があったと評価した。(2)と(3)は初期の交渉時点で主要な対立点に挙げられていた分野で、それらについて前進が見られたことは明るい材料といえる。また、運輸とエネルギーの2分野でも「集中的かつ有意義な議論が行われた」と指摘した。
他方、進展が見られない主な論点として、公平な競争条件の確保と漁業の2点を挙げた。公平な競争条件については、とりわけ国家補助の規律に関して進展がない点を挙げ、英国で将来的に国内補助金がどのように管理されるか予見できないことを懸念しているとした。漁業では、英国は実質的に英国領海からEU漁船のほぼ完全な排除を要求しており、全く受け入れられないと述べた。
今後について同首席交渉官は、英国が2021年1月1日にEUの単一市場と関税同盟を離脱する選択をした以上、それに対応すべく準備を進めるとし、EUの取り組み例として、7月21日に欧州理事会(2020年7月21日記事参照)で合意した50億ユーロの「英国EU離脱(ブレグジット)調整準備金」や、分野別の準備通知の整備(2020年7月13日記事参照)などを挙げた。
将来関係協定が1月1日に発効するためには、「遅くとも10月には合意に達しなければならない」と指摘。7月27日の週も予定どおり首席交渉官以下でロンドンでの協議を継続するとともに、次回の包括的な協議ラウンドは8月17日の週に開催する。
(安田啓)
(EU、英国)
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