フォン・デア・ライエン委員長、新欧州委の施政方針示す
(EU)
ブリュッセル発
2019年12月05日
欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は12月4日、就任後初となる欧州委員会の会合をブリュッセルで開催した。欧州委員会はその結果を踏まえた新委員会の方針や優先課題を明らかにした。会合は初めてペーパーレスで進み、デジタル化に実践的に取り組む姿勢を強調するかたちになった。
重点課題対応へ運営体制を刷新
まず、新たな欧州委員会の運営手法について、今後5年間の任期中に「合議(collegiality)」「透明性」「効率性」を重視するとした。
新欧州委員会では、委員長に次ぐ上級副委員長ポスト(3人)を創設(2019年11月29日記事参照)。優先課題である経済格差是正などの経済政策、気候変動対策など欧州グリーン・ディール政策、デジタル化推進と人材育成といった欧州デジタル化対応を総括する。優先度の高い課題に実績があり、いずれも欧州委員を務めた責任者を充て、目標達成と課題解決を図る狙いだ。
上級副委員長ポストの上記3課題に、「欧州生活様式推進」「世界における強固な欧州」「欧州民主主義のさらなる推進」を加えた重点6課題については、上級副委員長または副委員長に監督させつつ、欧州委員も加えた「コミッショナー・グループ」を新たに設置し、総力を挙げて取り組む。
また、米中通商摩擦の影響などの課題に取り組む「地政学的委員会(Geopolitical Commission)」(2019年11月28日記事参照)の中核的役割を担う、外交力強化のための「対外問題調整グループ(Group for External Coordination;EXCO)」を新たに立ち上げる。同グループは重要な国際問題について毎週協議するほか、さまざまな国際会議や首脳会談に向けてEUとしての立場を調整する。
単一市場強化を求める欧州商工会議所
一方、欧州商工会議所(ユーロチェンバース)は12月4日付で、傘下団体や各会員企業による「EU単一市場」に対する意識調査の結果(注)を公表。回答企業の約7割は「EU単一市場」の統合程度について、EU全域で円滑に事業展開するには十分な状況にはないと認識している実態を明らかにした。調査で明らかとなった「EUにおける(EU単一市場の視点で見た)ビジネス阻害要因」(上位5項目)は次のとおり。
- 煩雑な行政手続き:79.5%
- 各国間で異なるサービス規制:71.6%
- 法令や行政手続き要件などの情報アクセスの悪さ:69.1%
- 各国間で異なる商品規制:67.0%
- 各国間で異なる法務・契約慣行:65.6%
ユーロチェンバースは新欧州委に対して「EU単一市場に関する企業のニーズを満たすことに注力すべき」と指摘。域内企業が域外企業と比較して生産性を失いつつあるとの危機感を示し、単一市場の機能強化、既存ルールの確実な執行、サービス分野の一層の市場統合を求めた。行政手続きの簡素化や、EUと加盟各国での法制度や運用の整合化・情報共有、新たな政策や法令の中小企業に対する影響の把握・評価(2019年9月13日記事参照)を徹底するなどの政策対応が必要と提起している。
(注)「Latest documents」の12月4日付発表を参照。
(前田篤穂)
(EU)
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