新欧州委員会に対し中小企業政策の刷新求める産業界
(EU)
ブリュッセル発
2019年09月13日
ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)、欧州商工会議所(ユーロチェンバース)、欧州中小企業連合会(SMEunited)の3団体は9月12日、同日に欧州議会で行われた合同イベントの場で、(次期欧州委員会に対して)EUとしての新たな中小企業政策を求めるとする声明を発表した。ウルズラ・フォン・デア・ライエン次期欧州委員長は7月16日、自身に対する欧州議会での信任採決の前の演説で、「積極的な中小企業支援」を次期欧州委の優先政策課題の1つに据える方針(2019年7月17日記事参照)を掲げていたが、3団体は今回の声明で、これに先立ち、EUの「中小企業特使ネットワーク」が発表していた要望書への賛同を示すかたちで、将来を視野に新しい中小企業戦略を打ち出すことを求めた。
激動する時代にマッチした中小企業政策・戦略に期待
「中小企業特使ネットワーク」は、EU域内の中小企業の活動を見直す目的で2011年に設置された、各加盟国が指名する各国中小企業特使のネットワークだ。EUでは、2000年6月に中小企業の活性化とそのための環境整備について加盟国が合意した「欧州小企業憲章」が採択され、さらに2008年6月には、同憲章のアクションプランと位置付けられる「(欧州)小企業議定書(SBA)」が採択されている。SBAにはEU加盟国の政策立案の過程で、中小企業の利害に優先的に配慮することを求める「中小企業の視点で考える原則('Think small first' principle)」が盛り込まれており、同ネットワークはこの観点から政策立案者への助言・提言を行う機能を担う。
SBAの内容は2011年2月に見直されたが、今回の声明は、急速な社会情勢の変化やイノベーションに、中小企業が適切に対応できていない現状を踏まえた問題提起をするもの。欧州中小企業連合会は「イノベーションや産業デジタル化、循環型経済などの新たな潮流に対して、中小企業が潜在力を発揮できるようにするための課題として、ファイナンスへのアクセスに加え、必要な技能(スキル)をもった人材不足・ミスマッチの拡大がある」と指摘。職業訓練・教育(2019年9月12日記事参照)を推進し、伝統的な中小企業の生産工程においてもデジタル化を促進するため、国家・地域レベルでの支援体制を整えることが重要だと提言している。
また、欧州商工会議所は、中小企業と欧州経済に課されている、不要で非効率な行政手続きに伴う高コストについて問題提起し、SBAに盛り込まれている「中小企業の視点で考える原則」がEU域内で徹底されていない実態を指摘。政策立案過程における「中小企業テスト」(注)の質的改善を求めた。
(注)検討中の政策や法令の中小企業に対する影響を把握・評価するために、SBAに盛り込まれている手法。政策導入に伴う利益・損失を分析し、中小企業の視点で影響を評価する。損失の程度に応じて、政策オプションを調整することもある。
(前田篤穂)
(EU)
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