欧州商工会議所会頭ら訪米へ、共通課題での協力で関係再構築を目指す
(EU、米国)
ブリュッセル発
2019年09月12日
欧州商工会議所(ユーロチェンバース)は9月10日、米国との経済関係の再構築を目指す対話をするため、クリストフ・ライトル会頭がハイレベル経済ミッションを率いて訪米することを明らかにした。
ライトル会頭は、米国とEUの産業界がともに直面している、モノのインターネット(IoT)や人工知能(AI)を生産工程に導入することなどに伴う「スキル・ギャップ(技能ミスマッチ)」を克服する必要性に焦点を当て、成果を上げた欧州モデルを採用することで米国との協力の道筋をつける予定。具体的には、職業訓練学校生に座学と並行して企業の生産ラインで実習経験を積ませることで先端技術の習得機会を創出する「デュアル・システム」(ドイツなどでの実践事例が多い)や、商工会議所の役割を提示するという。
デジタル化や中国対応、WTO改革で米国との連携にも期待
欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン次期委員長は9月10日に発表した欧州委員会委員人事案(2019年9月11日記事参照)で、新たに創設する「上級副委員長」ポストのミッションとして欧州デジタル化対応の総括責任者を置くことにし、現在の欧州委員会で競争政策を担当しているマルグレーテ・ベスタエアー委員を指名するなど、産業・社会のデジタル化への対応はEUにとって最重要課題の1つになっている。ライトル会頭は、景気低迷期にこそEU・米国間の協力や貿易投資の促進が重要だと述べた。同時に、11月にフォン・デア・ライエン次期委員長の下で新たな欧州委員会が立ち上がる状況を踏まえ、EU・米国の政策決定関係者が共通課題に取り組む上で協力することが戦略的に重要だと強調している。
ライトル会頭はその具体的テーマとして、「(中国に代表される)国家資本主義への対応(2019年7月4日記事参照)」「WTOなど多国間の経済組織の維持と改革」を挙げている。今回の訪米には、次期欧州委員会が米国のトランプ政権との関係を再構築する糸口を探る狙いがあると考えられる。なお、具体的なミッション派遣時期などは明らかになっていない。
(前田篤穂)
(EU、米国)
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