欧州議会、次期欧州委員長にフォン・デア・ライエン候補を信任
(EU)
ブリュッセル発
2019年07月17日
欧州議会は7月16日、欧州委員会のジャン=クロード・ユンケル委員長の後任として、欧州理事会が候補指名したドイツのウルズラ・フォン・デア・ライエン国防相を賛成多数で承認した。賛成383票に対して反対327票(棄権:22票)と、承認の前提となる同議会の絶対過半数を辛うじて上回り、今後のEU機構運営の難しさを浮き彫りにした。
議会採決を控えて環境派や左派に配慮した課題認識示す
フォン・デア・ライエン候補は7月16日午前、ストラスブールで開催された欧州議会本会議で採決を前に優先政策課題に関する演説を行った(表参照)。
欧州議会での信任を得るためのカギは、直前まで態度を保留するとしていた中道左派「社会・民主主義進歩連盟(S&D)」グループの支持取り付けだったため(2019年7月12日記事参照)、採決前の演説では環境派や左派を強く意識した課題認識が示され、通商政策や産業政策、WTO改革など国際経済問題についての主張は影を潜めた。
この後、各会派代表が発言した。最大会派の中道右派「欧州人民党(EPP)」グループ(現有議席:182)と穏健リベラル派「リニュー・ヨーロッパ」グループ(同108)は同候補支持を表明。第2会派のS&Dグループ(同154)も、最終的に支持を表明する声明を発表。同グループのイラチェ・ガルシア・ペレス代表(スペイン選出)は「100%満足する演説ではないが、彼女が欧州委員長に承認された場合には、注意深く約束の履行状況を確認する」とコメントした。また、EU環境政党系「欧州緑の党・欧州自由同盟(GREENS/EFA)」(同74)や極右派「アイデンティティーと民主主義(ID)」(同73)、左翼系「欧州統一左派・北欧緑左派連盟(GUE/NGL)」(同41)の3グループ代表は不支持を明言した。
次期欧州委員長は11月1日に就任する予定で、任期は5年(2024年10月末まで)。次期委員長は今後、EU加盟国間のバランスと男女比率を考慮して、欧州委員会の閣僚に相当する欧州委員人事に着手する。このため、各加盟国からの提案を求めるが、10月21~24日に予定されている欧州議会での承認が必要となる。
欧州議会は各専門委員会の委員長などのポストについて、9月30日~10月8日までの期間に公聴会を開き、人事案をまとめる予定だ。
(前田篤穂)
(EU)
ビジネス短信 5c13e05a474c5148
ご質問・お問い合わせ
ビジネス短信の詳細検索等のご利用について
メンバーズ・サービスデスク(会員サービス班)
E-mail:jmember@jetro.go.jp