EU環境政党、次期欧州委員長候補不支持を表明
(EU)
ブリュッセル発
2019年07月12日
EU環境政党系の「欧州緑の党・欧州自由同盟(GREENS/EFA)」グループは7月10日、欧州委員会のジャン=クロード・ユンケル委員長の後任として欧州理事会が指名したドイツのウルズラ・フォン・デア・ライエン国防相について、7月15~18日に予定される欧州議会での採決で支持しない方針を明らかにした。また10日、欧州議会2位の中道左派「社会・民主主義進歩連盟(S&D)」グループは採決直前のグループ内協議まで態度を保留する方針を打ち出し、欧州議会選挙後のEU機構運営の難しさが浮き彫りになった。
民主的な人事プロセス無視との批判高まる
GREENS/EFAグループ代表を務めるスカ・ケラー議員(ドイツ選出)はフォン・デア・ライエン候補の政策方針を確認した上で、「法の支配や気候変動の問題について何ら具体的な提案を聞くことができず、落胆した」「われわれは(EUの)変革を求める有権者の信託を得て当選したが、この候補者(フォン・デア・ライエン氏)がどのような変革を実現できるのか見通せない」と批判を強めている。同グループ共同代表のフィリップ・ランベール議員(ベルギー選出)も「次期欧州委員会委員長人事について、透明性のある民主的なプロセスを有権者に示すことを求める」「筆頭候補者制度(2019年5月29日記事参照)が尊重されないのだとすれば、それは議会選挙制度に対する背信だ」とコメントした。
今回の欧州議会選挙後のEU機構人事で、欧州議会議長のポスト(2019年7月4日記事参照)を押さえたS&Dグループは7月10日、フォン・デア・ライエン候補を次期欧州委員長に据える人事案について、グループ内で2時間に及ぶ議論を行ったが、筆頭候補者制度が尊重されなかったとして、グループ所属議員から不満(2019年7月4日記事参照)が高まっていることを明らかにした。また、S&Dグループとして、フォン・デア・ライエン候補に各種政策提言を行っており、これについての回答を待っている状況だと述べた。フォン・デア・ライエン候補がこうした提言をどの程度反映した政策を打ち出すかを見極め、欧州議会での採決前にあらためて協議を行い、グループとしての投票方針を固めるとしている。
なお、5月の欧州議会選挙の結果、最大会派の中道右派「欧州人民党(EPP)」グループ(現有議席:182)と、第2位のS&Dグループ(154)に、親EU・穏健リベラル派「リニュー・ヨーロッパ」(108)を加えれば、3会派で総議席(定数:751)の過半数を押さえることができる。しかし、S&Dグループが態度を保留したため、今後の状況によっては、次期欧州委員長人事をめぐる欧州理事会提案が否決される可能性が出てきた。こうした混迷を想定した欧州理事会のドナルド・トゥスク常任議長は第4会派GREENS/EFAグループ(74)の協力取り付けを模索(2019年7月5日記事参照)したが、これも不調に終わり、欧州の夏季休暇シーズンを前にEU機構人事の難航が懸念される。
(前田篤穂)
(EU)
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