トゥスク常任議長、欧州緑の党との協力関係を模索
(EU)
ブリュッセル発
2019年07月05日
欧州理事会(EU首脳会議)の声明によると、ドナルド・トゥスク常任議長は7月4日、新体制となった欧州議会(2019年7月4日記事参照)で、EU首脳人事案を含む特別欧州理事会(6月30日~7月2日)の結果(2019年7月3日記事参照)について報告した。この中で、特に注目されるのは、同議長が5月の欧州議会選挙で党勢を大幅拡大(4位に躍進)させた「欧州緑の党・欧州自由同盟(GREENS/EFA)グループ」のEU機構運営と人事への参画の重要性を訴えた点だ。
欧州産業界にも欧州緑の党への接近の動き
トゥスク常任議長は「欧州緑の党がEUの意思決定機関に参画することは有益」と語り、EU機構運営に同グループ参画を求める考えを示唆した。また同議長は、欧州理事会を構成するEU加盟各国の首脳に、欧州緑の党関係者がいない実態にも触れつつ、「それでも、欧州緑の党を巻き込むことを全関係者に要請するつもりだ」とも述べ、欧州理事会として提案したEU首脳人事案の欧州議会での承認など、今後のEU機構運営に対するGREENS/EFAグループの支持・協力を取り付けたい姿勢を打ち出した。
これらトゥスク議長の異例の発言の背景には、5月の欧州議会選挙の結果、これまで同議会における実質的な2大政党だった、中道右派「欧州人民党(EPP)グループ」と中道左派「社会・民主主義進歩連盟(S&D)グループ」の党勢が大幅後退し、親EU・穏健リベラル派「リニュー・ヨーロッパ」〔「欧州自由民主同盟+ルネサンス(ALDE+R)グループ」から改称〕など第三勢力との連携が不可避となった事情がある。同議長は、自身の後任候補に「リニュー・ヨーロッパ」に近いベルギーのシャルル・ミシェル首相を充てる人事案を発表。欧州理事会のEU首脳人事案に対して、激しく反発(2019年7月4日記事参照)したS&Dグループは、欧州議会・議長ポストに同グループ所属のダビド=マリア・サッソーリ議員を充てる人事を受け入れる結果となった。しかし、GREENS/EFAグループについては提示できるEU首脳ポストがないため、今回の異例の発言につながり、欧州議会の主要委員会の委員長ポストなどの処遇を提案することになるとみられている。
なお、GREENS/EFAグループをめぐっては、欧州中小企業連合会(SMEunited)が6月14日の総会に、同グループのフィリップ・ランベール共同代表(ベルギー選出)を招き、今後の環境配慮型社会への移行の在り方を協議するなど、欧州産業界にも新たな動きがみられる。
このほか、今後のEU機構関連人事では、欧州理事会のEU首脳人事案から外れた、中・東欧、非ユーロ圏などの地域グループへの配慮も必要になりそうだ。
(前田篤穂)
(EU)
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