欧州議会、新議長に中道左派のサッソーリ議員を選出
(EU)
ブリュッセル発
2019年07月04日
欧州議会は7月3日、新議長にダビド=マリア・サッソーリ議員(イタリア)を選出した。同議員は63歳、5月の欧州議会選挙で2番目に議席数が多い会派となった中道左派系の社会・民主主義進歩連盟(S&D)グループに所属、欧州議員として2009年以降3期目で、改選前の欧州議会では副議長も務めていた。任期は2022年1月までの2年半。
欧州産業界は新議会に課題解決に向けて5項目の提言
今回の新議長選出では、サッソーリ議員をはじめ、環境政党系「欧州緑の党・欧州自由同盟(GREENS/EFA)」グループのスカ・ケラー議員(ドイツ)、保守系「欧州保守改革(ECR)」グループのヤン・ザラディル議員(チェコ)、左翼系「欧州統一左派・北欧緑左派連盟(GUE/NGL)」グループのシーラ・レゴ議員(スペイン)の4人で争われた。第1回投票でサッソーリ議員が首位だったが、有効投票の絶対過半数に達しなかったため、第2回投票が行われ、ここでサッソーリ議員が絶対過半数を獲得した。
第2回投票の結果は以下のとおり(有効投票数667票)。
- ダビド=マリア・サッソーリ議員:345票
- ヤン・ザラディル議員:160票
- スカ・ケラー議員:119票
- シーラ・レゴ議員:43票
5月の欧州議会選挙の結果を受け、欧州人民党(EPP)グループとS&Dグループの2大政党だけでは過半数に達せず決定権がないという厳しい現実が浮き彫りとなった(2019年5月27日記事参照)。
サッソーリ新議長は新議会としての優先課題として、「若年層の失業問題」「移民」「気候変動問題」「デジタル変革」「世界の新秩序」への対応などを挙げた。
他方、欧州商工会議所(ユーロチェンバース)は7月3日付の声明で、今回のサッソーリ新議長の就任を支持すると発表。欧州商工会議所として、欧州産業界が国際競争をしのぎ、イノベーションや就業機会を創出、厳しい国際情勢にEUとして適切に対処できるよう、新欧州議会と協力するとしている。ただし、同会議所は、過去に行われたビジネスに関連するEU法案に対する投票行動に基づいて、欧州議会・各議員を産業界の視点で評価する指標(欧州議員アントレプレナー指数)を3月6日に導入・公開しており、この指標に基づく前会期中の新議長に対する評価は「(産業・企業に『協力的』『非協力的』どちらも)入り混じっている(Mixed)」としている。
なお、同会議所が新欧州議会に求める優先課題は以下の5点。
- 各国レベルを含めて、完全に機能する、確固としたEU単一市場の実現
- EUとしての野心的な貿易・投資戦略構築(中小企業も享受できる、国際市場における自由・公正な貿易・投資を促進すること)
- 先進的で、安全性・相互接続性のある情報基盤整備を通じた、完全に相互接続した欧州デジタル市場の形成
- 欧州全域での技能・人材のミスマッチ解消
- 欧州産業界が気候変動や環境問題に適応し、生産・消費を循環型経済に転換させるための枠組み整備
(前田篤穂)
(EU)
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