欧州議会選挙で2大会派低迷の中、親EU派が大幅躍進

(EU)

ブリュッセル発

2019年05月27日

欧州議会(総数:751議席)が5月27日午前2時現在で公表した選挙結果推計(添付資料参照)によると、中道右派の欧州人民党(EPP)グループが179議席(23.8%)、連立関係にある中道左派の社会・民主主義進歩連盟(S&D)グループが150議席(20.0%)となり、中道2会派合計で43.8%と過半数を割り込む見通しとなった。これに対して今回、最も議席数を伸ばしたのは、親EUで穏健リベラル派の欧州自由民主同盟+ルネサンス(ALDE+R)グループが107議席(14.2%)で39議席増となった。他方で、勢力拡大が予測されていた極右の国家と⾃由の欧州(ENF)グループは58議席(7.7%)、EU懐疑派の⾃由と直接⺠主主義の欧州(EFDD)グループは56議席(7.5%)となり、議席数は伸ばしたものの、この2会派合計でも総議席に占める割合は15.2%にとどまる。

親EU路線のALDEグループや環境政党の躍進目立つ

今後、EPPグループとS&Dグループの間で協議が持たれ、今後のEU機構運営について議論すると考えられるが、フランスのマクロン大統領率いる政権与党の共和国前進を加え、第3位に躍進したALDE+Rグループの存在感は大きく、保守系の欧州保守改革(ECR)グループの58議席(7.7%)とともに、停滞著しい中道2会派にとって有力な連立候補と考えられる。一方、英国のEU離脱(ブレグジット)後、これらの政党に属する英国選出議員の議席が消滅するリスク(2019年5月24日記事参照)があり、その場合でも安定的にEU機構を運営できる連立体制の構築を目指す必要に迫られる。

また、第4位に躍進した環境政党の欧州緑の党・欧州自由連盟(GREENS/EFA)グループはドイツ、フランスなどで得票を伸ばし、70議席(9.3%)と全体で18議席増となり、ALDE+Rグループに続いて存在感を示した。左翼系の欧州統一左派・北欧緑左派連盟(GUE/NGL)グループは38議席(5.1%)で14議席を失った。

ALDEグループ代表で、同グループが次期欧州委員長の筆頭候補の1人に指名したギー・フェルホフスタット議員(ベルギー選出)は5月26日、「EPPとS&Dの両グループは(直接選挙による欧州議会選挙が初めて実施された)1979年以来初めて(欧州議会での)過半数の獲得に失敗した。わがグループの参画なくして安定多数の形成は不可能だ」「(今回の選挙結果から)最も議席数を伸ばしたのは、大衆迎合主義的政党(ポピュリスト)でも極右でもなく、われわれ親EUグループだということが明確になった」とツイッターに投稿。次期欧州委員長人事に同グループとして関与することにも言及した。

(前田篤穂)

(EU)

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