EU首脳人事案めぐり、主要政党グループから反発
(EU)
ブリュッセル発
2019年07月04日
特別欧州理事会(EU首脳会議)は7月2日、欧州委員会のジャン=クロード・ユンケル委員長の後任に、ドイツのウルズラ・フォン・デア・ライエン国防相を候補として指名する人事案を採択(2019年7月3日記事参照)、欧州議会に提案したが、主要政党グループからの反発が相次いでいる。
欧州議会選挙の結果受け、人事決定は難航の可能性
欧州議会は次期欧州委員長人事について、欧州理事会の提案する人事案を本会議第2セッションが開催される7月15~18日の間に審議するとしている。採決には、改選された新たな欧州議会(定数751)(2019年5月27日記事参照)での過半数の支持が必要だ。支持が得られなければ、欧州理事会として1カ月以内に新たな人事案を提案することを求められる。欧州議会での過半数の支持を得るには、中道右派の欧州人民党(EPP)グループ(182議席)と中道左派の社会・民主主義進歩連盟(S&D)グループ(154議席)に加えて、「3党」の支持が不可欠で、どの党が支持に回るのか、今後の議会運営を含めて注目される。
しかし、欧州議会や主要政党が今回の人事案を支持するかは不透明だ。5月に行われた欧州議会選挙で、党勢を後退させたが第2党としてのポジションを維持する社会・民主主義進歩連盟(S&D)グループは7月2日付の声明で、欧州理事会の提案する人事案について「われわれを深く落胆させる内容」と指摘、「筆頭候補者プロセス(2019年5月29日記事参照)を維持すべき」との見解を明らかにした。
また、欧州労働組合連盟(ETUC)は7月3日、「欧州は社会・政治・気候変動などの問題で危機に直面、有権者は変化を求めている」と指摘、欧州理事会の人事案(の人選)でこれらの解題解決が実現できるかが問われていると問題提起した。さらに今回の欧州委員長の人事案には、各会派が「筆頭候補者」として指名、欧州議会選挙を戦った人材が不在である点も問題視、「欧州の民主的な意志決定プロセスの破壊につながり兼ねない」と不満をあらわにした。
欧州議会選挙で党勢を大幅拡大(4位に躍進)させた、欧州緑の党・欧州自由同盟(GREENS/EFA)グループから次期欧州委員長候補に指名されたスカ・ケラー代表も7月2日、欧州理事会のEU首脳人事案について「欧州議会選挙の結果や、筆頭候補者プロセスを尊重していない」と指摘、「密室の協議で決まったグロテスクな提案。政争の具になり、誰も満足させられない」と厳しく批判した。
筆頭候補者プロセスについては、欧州議会第1会派のEPPグループも6月24日の声明でその維持を欧州理事会に求める見解を明らかにしており、欧州委員長人事をめぐる状況は複雑だ。
なお、親EU・穏健リベラル派の「リニュー・ヨーロッパ」〔108議席、6月12日に「欧州自由民主同盟+ルネサンス(ALDE+R)グループ」から改称〕所属の有力欧州議会議員であるギー・フェルホフスタット氏(ベルギー)は7月2日、欧州理事会が提案するEU首脳人事案で欧州理事会常任議長候補に選出されたベルギーのシャルル・ミシェル首相に対する祝辞を自身のツイッターで発信している。
(前田篤穂)
(EU)
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