欧州自動車部品産業、米中通商摩擦の中、EU新体制の早期構築求める
(EU、米国、中国)
ブリュッセル発
2019年06月06日
欧州自動車部品工業会(CLEPA)は6月4日、欧州議会選挙後のEU新体制構築について、混乱が予想されるとしたが、現在の厳しい国際情勢にも配慮し、EU首脳人事などで早期に合意するよう求める声明を発表した。
米中通商摩擦や産業デジタル化など課題は山積
同工業会が発表した「先行き不透明感が広がる中、立ち止まっている時間はない」と題する声明では、今回の欧州議会選挙の結果(2019年5月27日記事参照)、少なくとも3会派の連立が前提(2019年5月29日記事参照)とされる欧州議会での多数派形成は「より一層困難なものになる」と警戒する。また、EU28カ国のバランスを考慮して選定される欧州委員会の委員人事についても、一部の加盟国が「過激(radical)な勢力」を候補者として擁立してくるリスクも想定され、欧州委員人事の協議には相当の時間を要するというのが工業会の見立てだ。
しかし、欧州自動車部品産業にとっては、米国(トランプ政権)の保護主義的政策や中国のルールを無視した動きなど、通商問題(2019年5月22日記事参照)の方がより深刻だ。工業会は、これらの動きを「米中孤立化」と評し、世界の自動車部品産業にとって最大の懸案と指摘する。世界の自動車メーカーは米国とメキシコに投資しており、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA:新NAFTA)の妥結が待ち望まれており、米国が5月30日に発表したメキシコからの輸入品に対する関税賦課措置(2019年6月3日記事参照)は打撃になると警告する。こうした情勢において、工業会は欧州でこれまでになく明確なビジョンが必要になるとして、次期の欧州委員会委員長、欧州理事会常任議長、欧州議会議長、欧州中央銀行(ECB)総裁、外務・安全保障上級代表などのEU首脳人事を早急に固め、EUとしての前向きな方針を明らかにしてほしいと求めている。
さらに、欧州自動車産業はデジタル化やエネルギー転換(2019年5月21日記事参照)などの課題にも直面しており、こうした次世代技術のための適切な技能を備えた人材の育成に取り組むため、政治と産業界が連携すべきと呼び掛けている。
(前田篤穂)
(EU、米国、中国)
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